HLA(ヒト白血球型抗原)技術情報用語集
CREG(Cross Reactive Group)
CREG(Cross Reactive Group)とは、交差反応性を示すHLA抗原のグループです。
リンパ球細胞傷害試験(LCT法)を用いてHLAタイプが既知のリンパ球と抗血清を反応させ、実際に起きたリンパ球と抗血清の反応性をまとめたものがCREG表です。
下図の例では、①の抗血清はHLA-B54とHLA-B55のHLAタイプのリンパ球に反応すること、②の抗血清はHLA-B55 とHLA-B56のリンパ球と反応することを示しています。このように複数のHLA抗原と反応する抗血清が多く見つかり、一つの抗血清が共通して反応するHLA抗原同士を黒い線で結ぶことでCREGが作られました。
HLA抗原を結んでいる線は3種類あります。太い線→細い線→点線の順に交差反応が弱くなります。
例えば、A33とA34は太い線で結ばれ、強い交差反応性を示します。一方、A33とA31は点線で結ばれ、弱い交差反応性を示します。①のようにB54とB55の2つの抗原に反応する抗血清が多く見つかったため、B54とB55は黒い線で結ばれています。B55とB56も同様です。
CREGを臨床に活用することを考えてみます。②が患者血清でドナーがHLA-B54と仮定した場合DSA陽性ではありませんが、HLA-B54とHLA-B56は黒い線でつながっているため注意が必要になります。患者血清の中にはB55とB56に対する抗HLA抗体しか存在しませんが、B56に反応する抗体はB54にも反応する可能性があるためです。抗HLA抗体とHLA抗原の反応は1対1の反応ではなく、ひとつの血清は複数のHLA抗原と反応することを理解することが重要です。
CREGは上図のように実際に見つかった抗血清の特異性とHLA抗原タイプをグループ化して図式化したもので、国際ワークショップで報告された血清反応や経験則に基づいて作成されました。実際の反応に基づいていますが、HLA遺伝子で解明されたエプレット(Eplet)と異なる反応をすることもあります。また、HLA遺伝子で解明されたエプレットと似たような反応を示しますが、同一の反応を示すものではありません。
CREGは生体内で起きた反応をもとに作成されたため、現在でも抗HLA抗体反応の特異性同定の参考資料としてCREG表が使われています。
関連資料
資料動画:腎移植におけるエピトープ解析の今(2020年2月 ベリタスプライベートセミナー)