HLA(ヒト白血球型抗原)技術情報用語集
抗HLA抗体
移植・輸血・妊娠により、非自己のHLA抗原に感作されると、抗HLA抗体を産生します。
臓器移植・造血幹細胞移植前にレシピエントの血清中に抗HLA抗体が存在すると、移植後急性拒絶を起こす可能性があります。また、臓器移植後にドナー特異的抗体(Donor specific antibody:DSA)が存在すると予後悪くなります。そのため、移植前後の抗HLA抗体をスクリーニングおよび同定するための費用が2018(平成30)年4月に保険収載されました。
Wiebe C, et al. Rates and determinants of progression to graft failure in kidney allograft recipients with de novo donor-specific antibody. Am J Transplant. 2015 Nov;15(11):2921-30
血小板輸血は、造血器疾患患者等で血小板減少や出血予防のために行われます。しかしながら、十分な輸血効果の得られない症例が20~50% 存在し、その内の30%前後が抗HLA抗体による血小板輸血不応状態(platelet transfusion refractoriness:PTR)と考えられています。PTRの改善には、患者が保有している抗HLA抗体を検出し、対応抗原陰性の血小板輸血を行うことが有効です。
HLA適合血小板について(日本赤十字社 北海道血液センターのウェブサイトへ)
輸血用血液製剤中の抗HLA抗体などが受血者の白血球もしくは血管内皮細胞などと反応し、肺の毛細血管内皮細胞の透過性亢進が起こることが原因で、患者の抗HLA抗体が輸血血液中の残存白血球と反応し、輸血関連急性肺障害(TRALI)を発症するという症例報告があります。
抗HLA抗体の測定にはnMFI(normalized mean fluorescence intensity)が測定できるLABScreen試薬や、%PRAが測定できるFlowPRA試薬などがあります。
なお、移植医療において抗HLA抗体検査は保険収載の対象です。
<臓器移植分野>
・移植前抗HLA抗体スクリーニング検査
・移植前抗HLA抗体同定検査
・移植後抗HLA抗体スクリーニング検査
・移植後抗HLA抗体同定検査
<造血幹細胞移植分野>
・移植前抗HLA検査