ラーニングコーナー
2017/09/11
簡易プロトコル紹介:Dynabeads Oligo (dT)25を用いたmRNA抽出・精製
Dynabeads™ Oligo (dT)25は、粒径2.8 µmの磁気ビーズ表面に共有結合したOligo-dTに、mRNA 3'末端のPoly AをハイブリダイズさせてmRNA精製をおこないます。細胞や組織、全血などの未精製サンプルからダイレクトに純粋なmRNAを15 分で分離でき、少なくとも5,000報以上の論文で引用されています。
本稿では、Dynabeads Oligo (dT)25の日本語簡易プロトコルを紹介いたします。
用意する試薬類
Binding Buffer
20 mM Tris-HCl, pH 7.5, 1.0 M LiCl, 2 mM EDTA
Lysis/Binding Buffer
100 mM Tris-HCl, pH 7.5, 500 mM LiCl, 10 mM EDTA, 1% LiDS, 5 mM dithiothreitol (DTT)
沈殿が観察された場合、室温まで温め、撹拌してすべてのコンポーネントを完全に溶解してください
Washing Buffer A
10 mM Tris-HCl, pH 7.5, 0.15 M LiCl, 1 mM EDTA, 0.1% LiDS
Washing Buffer B
10 mM Tris-HCl, pH 7.5, 0.15 M LiCl, 1 mM EDTA 10 mM Tris-HCl, pH 7.5
Reconditioning Solution
0.1 M NaOH
Storage Buffer Oligo (dT)25
250 mM Tris-HCl, pH 7.5, 20 mM EDTA, 0.1% Tween-20, 0.02% NaN3
操作方法
Dynabeadsの準備
- ピペッティングまたは、ローラーにて回転させ(5分)、完全に Dynabeads Oligo (dT)25 を再懸濁し、チューブへ200 µL(1mg)を移す
- 磁石(DynaMag)に取り付け、上清を除去する
- 磁石からチューブを外し、100 µLのBinding Bufferを加え、再懸濁する
- 磁石に取り付け、上清を除去する
- 磁石からチューブを外し、100 µLのBinding Bufferに再懸濁する
細胞溶解液からのmRNAの単離
- 100 µLのBinding Bufferに再懸濁した洗浄済みの Dynabeads Oligo (dT)25 を磁石に取り付け、上清を除去し、磁石から外して細胞溶解液を加える
Note:
細胞溶解液はDynabeads Oligo (dT)25混合直前に溶解させたものか、使用直前まで-80℃で保存したものを使用してください - Dynabeads Oligo (dT)25と溶解物をよく混合する
- ローラー、あるいはミキサーを用いて室温で3 - 5分、アニーリングさせる。
Note:
もし、溶液に粘性がある場合にはアニーリング時間を増やしてください。このステップでサンプル中のmRNAはoligo dT配列にアニーリングされます - チューブを磁石に取り付け、2分間静置後、上清を除去する
- Dynabeads - mRNA複合体にWashing Buffer A(0.5 – 1 mL)を加え洗浄する
- チューブを磁石に取り付け、2分間静置後、上清を除去する
- 続いてWashing Buffer B(0.5 – 1 mL)を加え洗浄する
- チューブを磁石に取り付け、2分間静置後、上清(Washing Buffer B)を除去する
- チューブを磁石から外し、10 – 20 µL 10 mMのTris-HCl, pH7.5に再懸濁させる
- 75 – 80℃、2分間インキュベートする
- チューブを磁石に取り付け、素早くmRNAを含む上清を新しいRNaseフリーのチューブへ移す
Total RNAからmRNAの精製
このプロトコルは75 µgのtotal RNAをスタートサンプルとしています
- Total RNAサンプルを75 µL /100 µLになるようにdistilled DEPC-treated waterあるいは10 mM Tris-HCl, pH 7.5を調製する
- 100 µLのBinding Bufferを加える。もしTotal RNAの量が75 µL /100 µL未満の場合は、Binding Bufferで最終的に200 µLになるように調整する
- RNAの高次構造を解消するために65℃、2分間インキュベートし、直ちに氷冷する
- 上記3のチューブに100 µLのBinding Bufferに再懸濁した洗浄済みのDynabeads Oligo (dT)25を加える
- ミキサー等で撹拌しながら室温で5分間アニーリングする
- チューブを磁石に取り付け、2分間静置後、上清を除去する
- 200 μLのWashing Buffer B(0.5 – 1 mL)を加え、慎重に2、3回ピペッティングしながら洗浄する。再度チューブを磁石に取り付け、2分間静置後、上清(Washing Buffer B)を完全に除去する
- 上記7の洗浄ステップを繰り返す
- チューブを磁石から外し、10 – 20 μLの10mM Tris-HCl, pH7.5に再懸濁させる
- 75 - 80°C、2分間インキュベートする
- チューブを磁石に取り付け、素早くmRNAを含む上清を新しいRNaseフリーのチューブへ移す
Dynabeads Oligo (dT)25の再生
同一サンプルを使用する場合
mRNAを溶出した後のDynabeads Oligo (dT)25は同一サンプルであれば再生することなく使用できます。
同じサンプルに対してmRNAを溶出したDynabeads Oligo (dT)25を用いて、同じ操作を繰り返すことでさらにmRNAを単離することも可能です。
異なるサンプルを使用する場合
異なるサンプルを用いる場合には、Dynabeads Oligo (dT)25を再生して使用してください。
5回まで再生して利用することができます。
Dynabeads Oligo (dT)25の再生プロトコル
本プロトコルは最初に100 µLのDynabeads Oligo (dT)25を用いた場合です
- 使用したDynabeads Oligo (dT)25を最初に分取した際と同量である100 µLのReconditioning Solutionを加え、懸濁液を新しいRNase-free のチューブへ移す
- 65°C で2分間インキュベート
- 磁石にセットして30秒間静置した後、上清を除去する
- Reconditioning Solutionで2回洗浄する(1~3の操作を計3回おこなう)
- Dynabeads Oligo (dT)25を100 µLのStorage Bufferに懸濁する
- 磁石にセットして30秒間静置した後、上清を除去する
- 5 - 6の操作をあと2回(計3回)繰り返す(あるいはpHが8以下になるまでおこなう)
- 100 µLのStorage Bufferに懸濁し冷蔵(2-8℃)で保管する
Note:
一度用いたDynabeads Oligo (dT)25を保管する場合は、コンタミを防ぐためにオリジナルのバイアルには戻さず、別のチューブで保管してください
ご案内
このプロトコルは、一般的なmRNA抽出・精製に対するものです。
ここでは例としてDynabeads Oligo (dT)25を200 µL(1mg)用います(目安:20-50 mg 動物組織サンプル、100 mg 植物組織サンプルまたは1 - 4 x 106 cells)。これは必要に応じてスケールアップあるいはダウンが可能です。
詳細は各製品の添付書またはマニュアルをご参照ください。