ログインVERI+CLUB へログインが必要です。
メールアドレス
パスワード

パスワードを忘れた方

研究者の声

2024/01/15

樹状細胞の機能性スクリーニングで活躍!樹状細胞の分化培地の使用例をご紹介 研究者の声【39】

  • 用途別細胞培養

自然免疫と獲得免疫の両方の免疫応答で重要な役割を担っており、近年では免疫療法などでも注目されている樹状細胞について、順天堂大学の岩澤 卓弥 先生より記事を執筆いただきました。樹状細胞の効率的な分化に弊社製品を役立てていただいていますので、岩澤先生の研究内容も含めてご紹介いたします。

研究者紹介

岩澤先生.jpg

岩澤 卓弥 先生 (写真)

東洋大学大学院 健康スポーツ科学部 栄養科学科 非常勤講師
東洋大学 ライフイノベーション研究所 助手
順天堂大学 静岡災害医学研究センター

大木 香穂 さん

東洋大学大学院 健康スポーツ科学研究科 栄養科学専攻

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

研究内容

疾患の根絶と健康長寿を目指して分子薬理学・免疫をツールとして、がん免疫・抗ウイルス・栄養学などの観点からその機能の解明、バイオマーカーの探索(1)(2)(3)や機能性成分による免疫制御の研究(4)をしています。

参考論文

  1. Murakoshi M, Iwasawa T. et al. 2022. Development of an In-House EphA2 ELISA for Human Serum and Measurement of Circulating Levels of EphA2 in Hypertensive Patients with Renal Dysfunction. diagnostics. 12(12) 3023.
  2. Furukawa T, Kimura H, Sasaki M, Yamada T, Iwasawa T, Yagi Y, Kato K, Yasui H. 2023. Novel [111In]In-BnDTPA-EphA2-230-1 Antibody for Single-Photon Emission Computed Tomography Imaging Tracer Targeting of EphA2. ACS Omega. 8(7) 7030-7035
  3. Murakoshi M, Kamei N, Suzuki Y, Kubota M, Sanuki M, Tashiro H, Iwasawa T, Kato K, Tanaka M, Furuhashi M, Gohda T. 2023. Circulating tumor necrosis factor-related biomarkers predict kidney function decline in Japanese patients with diabetes: an observational cohort study. Diabetes Research and Clinical Practice. 111017
  4. Iwasawa T. et al. 2023. Effect of a food containing Auraptene on core body temperature, serum osmolarity and thermal sensation under hot and humid environment. Japanese Pharmacology & Therapeutics. 51(9) 1341-1353
  5. Akira S. et al. 2006. Pathogen Recognition and Innate Immunity. Cell. 124, 783-801
  6. Takeuchi O. et al. 2010. Pattern recognition receptors and inflammation. Cell. 140, 805-820
  7. Zhou Q. et al. 2021. SARS-CoV-2 infection induces psoriatic arthritis flares and enthesis resident plasmacytoid dendritic cell type-1 interferon inhibition by JAK antagonism offer novel spondyloarthritis pathogenesis insights. Frontiers in immunology, 12, 635018.

実験内容・結果

実験内容

自然免疫・獲得免疫の双方で活躍し、ウイルスなどの外敵に対する免疫応答において中心的な役割を果たすのが樹状細胞である。樹状細胞は、ウイルス由来のRNAやCpG DNA等の病原体成分を感知するためのToll様受容体(TLR)やRIG(RIR)を発現しており、それらを介してIRFやTRAF等のシグナル分子が誘導され、Ⅰ型インターフェロンを産生することで自然免疫応答を作動している(5,6)。自然免疫ではいかに高感度に樹状細胞がウイルスを感知できるようになるかが重要である。そこで我々は古くから食すると免疫が向上すると言われているような植物などの成分を1分子ごと樹状細胞へ作用させてTLRに作用する一般的な免疫賦活剤様作用ではなく、TLRの発現量を増強することでウイルスを高感度に認識できるようになるような成分を探索した。

実験手法

  • EDTA採血したヒト全血からEasySep™ Direct Human Monocyte Isolation Kit (Catalog #19669)を用いて単球を回収し、ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitを用いて96 well plate上で未成熟な樹状細胞を分化させた。
  • 未成熟な樹状細胞をさまざまな植物由来の機能性成分を添加した培地(成分N)で1日間培養し、擬似ウイルスとしてTLR9アゴニストとなるCpGモチーフであるODN 2216(7)を1日間作用させた。

図1.実験のスキーム

researcher40_1.png

実験結果

図2. ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitによる分化前後の細胞表面マーカーをFACSにて解析した。

researcher40_2.png researcher40_3.png

分化誘導後の検鏡像

researcher40_4.jpg

researcher40_5.png

分化前の細胞はCD14陽性の単球であり、分化誘導5日後にはCD14の発現は消え、CD1c陽性の樹状細胞へ分化していることを確認した。

図3. qPCRによりTLR遺伝子の発現量変動を評価した。

researcher40_6.png researcher40_7.png

成分Nを作用させることで、ODN刺激によるⅠ型インターフェロンの産生量が増加した。今回発見した成分Nは樹状細胞のTLR9の発現量を向上させることでpDCのようにウイルスを高感度で認識し、Ⅰ型インターフェロン産生を相乗的に増加させたことから、ウイルスの感染・増殖予防において有用な成分であると考えられる。

ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitの活用事例・感想

製品の活用事例

樹状細胞に対する機能性成分のスクリーニング

製品を使用しての感想

分化誘導において添加するFBSのロットによって分化効率が大きく変動してしまい、再現性の得られる結果を得るためには精密なバリデーションが必要となるが、こちらのキットは血清フリーでありながら生存率も高く、高効率で分化が行えるので再現性のある結果を得やすい。また、生存率・分化効率が高いためPCRで必要なRNA量や上清中のサイトカイン測定なども96 well plateで実施可能であるので採血量も1/10程度に減らせたことで研究を進めやすくなりました。

今後の展望

成分Nは低分子化合物であり、構造の同定から安全性試験、体内(マウス)の薬物動態も確認しており、経口投与により高効率で吸収できる非晶質個体分散体の作製(共同研究)に成功しているため、マウスによる非臨床試験を経て臨床試験を行い、免疫賦活剤とは異なる新たなウイルスへの感受性を向上させる成分として社会へ提供したいと考えている。

ご利用いただいた製品

製品コード 製品名 梱包単位
ST-10985 ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kit 1 kit
ST-19669 EasySep™ Direct Human Monocyte Isolation Kit 1 kit

関連記事リンク

関連製品

記事に関するお問い合わせ