研究者の声
2017/10/31
造血幹細胞、間葉系幹細胞に関する研究でベリタス製品を使用(StemSpan、Dynabeadsなど)
- 用途別細胞培養
千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学研究室(岩間 厚志 教授)を訪ねて、ベリタス取扱製品のお話を伺いました。
研究者紹介
経歴
1987年3月 新潟大学医学部卒業
1992年8月 熊本大学医学部分化制御学講座助手
1996年9月 ハーバード大学医学部ベス・イスラエル病院血液・腫瘍講座研究員
2002年4月 東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究分野 講師
2005年2月 千葉大学 大学院医学研究院 細胞分子医学研究室 教授
2018年3月 東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞分子医学分野 教授(兼任)
研究トピック・概要
研究トピック
- 造血幹細胞の自己複製機構
- 癌のエピジェネティクス制御機構
研究概要
造血幹細胞の自己複製機構の分子基盤を明らかにすることを主題とし、「幹細胞生物学」の真髄となる真理の探究とともに、先端医療の確立に貢献する研究を目指しています。
また、幹細胞制御機構の破綻が多くの疾患につながることが明らかになり、その理解も重要なテーマとして取り組んでいます。
特に、極少数の自己複製能を有する癌幹細胞の存在が、白血病を始めとしていくつかの癌種で確認されており、癌幹細胞システムと正常幹細胞システムとの異同についても重要なテーマとして研究を進めています。
ポリコーム遺伝子Bmi-1(※)による造血幹細胞制御機構を解明する研究成果は、米国科学雑誌「Cell Stem Cell」に掲載されました。
Bmi1はヒストン修飾を介して遺伝子発現を抑制し、造血幹細胞の維持に必須な役割を果たす事が知られていましたが、Bmi1がニッチ細胞(骨髄血管周囲に存在する間葉系細胞)の維持にも重要な制御因子であることを証明しました。
現在は造血幹細胞ニッチにおいてBmi1により発現が抑制される遺伝子群を同定し、その遺伝子群の機能解析を通して、造血幹細胞ニッチの維持と造血幹細胞・ニッチ相互作用に関わる分子ネットワークを明らかにしているところです。
(※)Bmi-1:ポリコーム群ヒストン修飾複合体1の構成遺伝子
インタビュー
これまで研究室ではどんなベリタスの製品を使用していましたか?またそれらを使用していた理由は何ですか?
正直、ベリタスで扱っていたとは意識したことはありませんでしたね。
ただこのように話をしていると意外と多くの製品を利用させてもらっていますね。その主なものはDynabeads、STEMCELL Technologies社の製品のようです。
どれも基本的な選択基準はパフォーマンスと信頼性ですね。
やはり研究を進める上で、パフォーマンスが良くなくては良い結果は得られません。多少高いと感じることもありますが、それもそのパフォーマンスに見合ったものであれば納得します(笑)。
後は信頼できる共同研究者からの紹介も大きいですね。現在も、私の出身ラボの一つである当時の東京大学・中内研究室および大阪大学・長澤研究室などとは共同研究を行っていますが、そこから紹介された製品も多くあります。
Dynabeadsを用いて、FACSで解析するPDGFRb+CD31-CD45-T119- 間葉系幹細胞の分画
ベリタス製品を使用した理由
Dynabeads Sheep anti-Rat IgG
- 目的:
フローサイトメーターでマウスの骨髄由来間葉系幹細胞をソーティングするため、Dynabeadsを使用し、Lineage depletionを行っています。 - 理由:
間葉系幹細胞(MSCs)のサイズはより大きいので、カラムを用いるとよく詰まってしまい、カラムでのdepletionができないという問題がありました。
ある時、他の先生からの紹介でDynabeadsのプロトコールを用いたら、明らかな間葉系幹細胞の分画が得られました。
それにより、フローサイトメトリーによるMSCsを分離することが可能となりました。
Dynabeads M-280 Sheep anti-Rabbit IgG
Dynabeads Sheep anti-mouse IgG
Dynabeads Protein A/ Protein G
- 目的:
エピジェネティック解析のためにDynabeadsを使用しました。ChIP-sequence(クロマチン免疫沈降ChIP)による網羅的な解析を通して、造血幹細胞制御に特徴的なヒストン修飾とその標的遺伝子制御様式を理解しました。 - 理由:
ChIPに関しては、Sepharoseおよびagaroseより非特異的な結合が少ないのが圧倒的な理由です。
Dynabeadsを用いるChIPシーケンシング(ChIP-Seq)は、ゴールドスタンダードなプロトコールになりました。
StemSpan SFEM medium
MethoCult H4435 Enriched
MegaCult-C
- 目的:
Ex vivoでヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を増幅するため、StemSpan SFEM mediumを使用しました。
免疫不全マウス(NOGマウス)に移植し生着した造血幹細胞の機能を評価するため、MethoCultおよびMegaCult-Cを用いて、コロニーアッセイを行いました。 - 理由:
実験を開始する前に、いくつかの試薬を試して比較をしました。様々な理由がありますが、例えばStemSpanの場合には優れた増殖能と造血幹細胞の未分化性がより維持されやすいという点が選択のポイントでした。
Methocult GF H4435でのコロニーアッセイデータ
ベリタスのホームページには、STEMCELL Technologies社のホームページにはない様々な情報があることをご存知でしょうか?
製品を探すのは大体論文で紹介されているものが多いですね。論文を見ると、STEMCELL Technologies社のStemSpanやMethoCultなどが使われていて、その細かな情報はSTEMCELL Technologies社のホームページから直接情報を得ていました。
ホームページにはアプリケーションの紹介や有用なビデオが掲載されているとともに、サンプル申し込みもできるようですので利用価値はありますね。今後はメールニュースで最新情報を得るようにします。