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ラーニングコーナー

2018/12/11

「BrainPhys」脳の生理条件を再現!神経生理学研究用 無血清培地

  • 用途別細胞培養

STEMCELL Technologies社の「BrainPhys™ Neuronal Medium」(以下「BrainPhys」と表記)は、Dr. Cedric BardyとDr. Fred H. Gageの報告 (Proc Natl Acad Sci USA, 2015) に基づいた、脳の生理条件を再現した無血清培地です。プライマリーニューロンおよびヒト多能性幹細胞(ES/iPS細胞)由来ニューロンの培養に適しています。従来の神経培養用培地やDMEMと異なり、細胞の生存だけでなくin vitroでの神経機能をより良くサポートするように設計されています。そのため、培養条件からそのまま活動電位発生やシナプス活動を含む神経機能解析を行うことも可能になります。

同じくSTEMCELL Technologies社の「NeuroCult™ SM1 Neuronal Supplement」(以下「SM1 Supplement」と表記)は、B27を改良した無血清サプリメントです。多くの機能性ニューロンを再現性高く得られ、グリア細胞のコンタミネーションを最小限(<1% GFAP+)に抑えるように最適化されています。

「BrainPhys」と「SM1 Supplement」を組み合わせて培養すれば、神経細胞の長期培養がスムーズに実現します。

「BrainPhys」の特長

  • 生理的:脳の細胞外環境を再現します
  • 活性:神経機能を改善し、シナプス活性の高いニューロンの比率を上昇させます
  • 簡便:培地を変更せずに機能解析が可能です
  • 多用途:中枢神経系由来プライマリーニューロン、およびヒトES/iPS細胞由来ニューロンを長期培養できます
  • 信頼性:厳正な原料スクリーニングと品質管理によって、ロット間差を最小限に抑えます

従来培地とBrainPhysの比較 ー組成および神経機能ー

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BrainPhysは、DMEM/F12やNeurobasal®と比べて培地組成が生理的条件を満たし、シナプス活性を含めた神経細胞の機能をサポートします(表中のチェック印)。

参考文献:C Bardy et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2015

動画によるBrainPhys製品紹介

アプリケーション例

BrainPhys + SM1 Supplement を用いて行うアプリケーションとして、以下のような例があります。

  • マウス、ラットのプライマリーニューロンの培養
  • ヒトES/iPS細胞由来ニューロンの分化、成熟
  • 蛍光ライブイメージング(カルシウムイメージング、オプトジェネティックス)
  • Transdifferentiation(体細胞からニューロンへ)
  • 微小電極アレイ(MEA)による神経活動検出

「BrainPhys + SM1 Supplement」プロトコル概要

プライマリーニューロンの播種~培養

パパインで消化したマウスまたはラットのプライマリー組織を、SM1 Supplement、L-グルタミンおよびL-グルタミン酸を添加したNeuroCult Neuronal Plating Medium(BrainPhys Primary Neuron Kit [商品コード:ST-05794] に含有)に播種します。播種後5日目にSM1 Supplementを添加したBrainPhysに半量交換し、以降3〜4日毎に培地を半量交換します。

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ヒトES/iPS細胞からニューロン分化~培養

誘導:ヒトES/iPS細胞から、STEMdiff Neural Induction MediumとAggreWell 800を用いて胚様体(EB)プロトコルでEBを作製後、STEMdiff Neural Rosette Reagentで神経ロゼットを選択的に回収します。
分化:SM1 Supplement、N2 Supplement-A(商品コード:ST-07152)などを添加したBrainPhysでニューロンに分化させます。BrainPhysで培養開始後は、週に2、3回培地を半量交換します。必要なサプリメント類を含む、BrainPhys™ hPSC Neuron Kit(商品コード:ST-05795)のご利用がおすすめです。

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データ紹介【1】プライマリーニューロン

ラット初代ニューロンを長期間培養

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E18ラット胎仔から分離した皮質由来プライマリーニューロンを、BrainPhys + SM1 Supplementで培養した例です。
21日(A)および35日(B)経過しても多数の生きたニューロンが神経突起の伸長・分枝とともに観察され、細胞凝集も最小限に抑えられています。

シナプス前・後マーカーを発現

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E18ラットの皮質由来プライマリーニューロンをBrainPhys + SM1 Supplementで培養した例です。21日間培養後、広範囲に存在する樹状突起と、シナプス前マーカーのSynapsin(A、C:緑)およびシナプス後マーカーのPSD-95(A、B:赤)の発現・局在から、ニューロンが成熟したことがわかります。またSynapsinは、樹状細胞マーカーMAP2(A、D:青)で示される通り、細胞体および樹状突起に沿って点状に分布しています。

「BrainPhys + SM1 Supplement」で長期培養をサポート

(A)E18ラットの皮質由来プライマリーニューロンをBrainPhys + SM1 Supplement、または他社の培養系で21日間培養しました。BrainPhys + SM1 Supplementでは、他社培養系と比較して生存細胞数が有意に多くなりました(n=4; 平均±95%CI; *p <0.05)。
(B)E18ラットの皮質由来プライマリーニューロンを、SM1 Supplementまたは他社製B27様サプリメント(Competitor 1, 2, 3)を添加した従来の神経培地で21日間培養しました。SM1 Supplementを添加した培養系では、他社サプリメントを添加した培養系と同等以上のニューロン数が得られました(バー:平均標準誤差)。

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プライマリーニューロンのシナプス活動の改善

BrainPhys + SM1 Supplementで成熟させたE18ラット皮質由来プライマリーニューロンは、21日培養後に自発的な興奮性(A)および抑制性(C)のシナプス活動を示しました。従来の神経培地で成熟させた場合(B, D)よりも振幅、頻度ともに高く活動していました。

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プライマリーニューロンの電気的活性の向上(MEA)

E18ラットの皮質由来プライマリーニューロンを従来の神経培地に播種し、5日目からBrainPhys + SM1 Supplementに移行した場合としない場合とで、微小電極アレイ(MEA)による電気的活性を測定しました。(A)BrainPhys + SM1 Supplementに移行すると経時的に神経細胞の発火頻度が上昇しましたが、移行しない場合は頻度が低いままでした (n = 1; mean ± SEM, 128 electrodes)。(B)活性のある電極(>0.005 Hz)の割合も、BrainPhys + SM1 Supplementに移行した場合は21-44日目に60-70%で安定しましたが、移行しない場合は5%未満でした。

BrainPhys_MEA.png

 

データ紹介【2】ES/iPS細胞由来ニューロン

BrainPhys + SM1 + N2 Supplement-Aで形成させたヒトES/iPS細胞由来ニューロン

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H9細胞株(ES細胞株)からSTEMdiff Neural Induction Mediumの胚様体プロトコルをベースに神経前駆細胞に誘導した後、さらに2% SM1 Supplement、1% N2 Supplement-A、20 ng/mL GDNF、20 ng/mL BDNF、1mM db-cAMP、200 nMアスコルビン酸を添加したBrainPhys(A)またはDMEM/F12(B)でそれぞれ培養しました。BrainPhysで分化させたニューロンの方が、神経突起伸長が広範囲にわたり、デブリも少なくなっています。スケールバーは100 μm。

ヒトES/iPS細胞由来ニューロンの神経マーカー発現

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H9細胞株からSTEMdiff Neural Induction Mediumで誘導した神経前駆細胞を、2% SM1 Supplement、1% N2 Supplement-A、20 ng/mL GDNF、20 ng/mL BDNF、1mM db-cAMP、200 nMアスコルビン酸を添加したBrainPhys (A, C)およびDMEM/F12(B, D)で培養し、神経分化・成熟させました。14日後(A, B)と44日後(C, D)に神経細胞はSynapsin 1(緑)とMAP2(赤)を発現していました。BrainPhys培養系の方がより多くのSynapsin 1を発現していました。スケールバーは100 μm。

ヒトES/iPS細胞由来ニューロンの活動電位

BrainPhys培養系(A, C)およびDMEM/F12(B, D)で成熟させたヒトES/iPS細胞由来ニューロンは、自発的な興奮性(A)および抑制性(C)のシナプス活動を示し、DMEM/12で成熟させた場合よりも振幅、頻度ともに高く活動していました。

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「BrainPhys + 培地サプリメント」セット製品ご案内

BrainPhysは、培地とサプリメントのセット品としても販売しており、個別購入よりもお得になっております。
下表では、各セット品(左カラムに太字で製品コードを記載)に含まれる構成品を〇で示しています。

単品製品コード ST-05790 ST-05791 ST-05711 ST-05731 ST-07152
単品製品名 BrainPhys Neuronal Medium BrainPhys w/o Phenol Red NeuroCult SM1 Neuronal Supplement NeuroCult SM1 w/o Vitamin A N2 Supplement-A
梱包単位 500 mL 500 mL 10 mL 10 mL 5 mL
ST-05792      
ST-05792-WOVA      
ST-05793    
ST-05793-WOVA    
ST-05791-CUL      
ST-05791-DIF    
ST-05791-CUL-WOVA      
ST-05791-DIF-WOVA    
ST-05794 *
ST-05795 **

* BrainPhys™ Primary Neuron Kit: プライマリーニューロンの播種時に必要な「Neuron Plating Medium」も含まれます。

** BrainPhys™ hPSC Neuron Kit: ヒトES/iPS細胞由来ニューロンの培養に必要なBDNFおよびGDNFも含まれます。

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