ラーニングコーナー
2020/12/23
単層培養によるヒト多能性幹細胞(hPSC)からの神経系誘導
- 用途別細胞培養
胚様体(EB)形成によるヒト多能性幹細胞(hPSC)からの神経系誘導は、神経ロゼット形成の確認により問題なく誘導できているかどうかを視覚的に評価することが可能ですが、シングルセルの神経前駆細胞(NPC)を得るまでに16-19日間のプロセスを要します。このため最近では、たった6日間でシングルセルのNPCを得ることができる、単層培養ベースの神経誘導法が主流となっています。
STEMdiff™ Neural Induction Medium (NIM)と STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit は血清フリーで成分が定義された汎用性の培地であり、両方の神経誘導法でお使い頂けます。本稿では、これらの培地を用いた単層培養のポイントをご紹介します。
EBベースのプロトコールは、テクニカルマニュアル(Generation and Culture of Neural Progenitor Cells using the STEMdiff™ Neural System)をご参照ください。
単層培養の完全なプロトコールは、技術報告(Technical Bulletin:A Monolayer Culture Method for Neural Induction of hPSCs)をご参照ください。
併せてこちらもご確認ください。(https://www.stemcell.com/neural-induction-for-human-pluripotent-stem-cells-hpscs-using-monolayer-culture.html)
単層培養で神経誘導する際のコツ
STEMdiff™ NIMを使用して、単層培養で神経系誘導する際に役立つヒントをご紹介します:
- 神経誘導を成功させるには、適切な細胞密度であることが非常に重要です。最初のプレーティングの際、hPSCの播種密度は200,000~250,000 cells/cm2の範囲にしてください。細胞密度が低すぎると、神経誘導の効率が低下します。
- 継代をした日には、Y-27632 ROCKインヒビターを終濃度10 μMで添加してください。これによりシングルセルの生存率が向上します。
- 培養容器は、ポリ-L-オルニチン/ラミニン(PLO/L)またはMatrigel™(Corning Matrigel® hESC-Qualified Matrix)でコーティング済みのものを使用します。
- 単層培養プロトコールの場合には細胞を高密度で播種し、最初のプレーティングから3日間で細胞単層がコンフルエントに近い状態になるようにします。
ただし、神経誘導を促進するにはここからさらに追加の培養日数が必要になります。 - この単層培養システムでは細胞が多様な形態をとりうるため、神経誘導を確認する手段としての視覚的評価は信頼性が低くなります。
最初に実験される際には、様々なタイムポイントで免疫細胞化学またはその他の形質チェックをおこなえるよう余剰のウェルを設けてください。
神経誘導がうまく行っているかどうかを判定する継代前のチェックとして、STEMCELL Technologies社ではPAX6(神経誘導マーカー)とOCT4(多能性マーカー)の確認をお勧めしています。 - 通常、最初の継代はプレーティングの6-9日後、または細胞がPAX6+OCT-となった時点で ACCUTASE™(37℃で5-10分間処理)を用いておこないます。
- 最初の継代の後、NPCの細胞密度が70-80%コンフルエントになったら継代します。次の継代における播種密度は125,000~200,000 cells/cm2の範囲にしてください。
- 継代3回まではNPCをSTEMdiff™ Neural Induction Mediumで維持し、その後はSTEMdiff™ Neural Progenitor Medium (NPM)で維持してください。
これより早い時期に培地をNPMにスイッチすると、OCT4陽性細胞のような不要な細胞の増殖を促進してしまう可能性があります。
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