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2018/09/10
完全長ラミニンvs. 断片ラミニンの比較:コスト、細胞機能、細胞形態、増殖能など
- 用途別細胞培養
ラミニン(Laminin, LN)は細胞機能の改善に細胞型特異的なマトリックスとして、ほぼすべての細胞の成長・サポートに関わります。完全長ラミニンは細胞表面受容体を結合し、細胞シグナル伝達カスケードを活性化するため、より機能的で本格的な細胞をもたらします。しかし、断片ラミニン(ラミニン活性をもつフラグメント)は、適切な細胞外ネットワークが形成や正しい細胞シグナル伝達に必要とされる多くのラミニンドメインが欠如しています。
BioLamina社が提供する完全長ラミニンは、生体内と同じ環境を再現することが可能です。
本ページでは、完全長ラミニンおよび断片ラミニンを培養のコスト、細胞機能、細胞形態、増殖能などの比較についてご紹介します。
完全長ラミニン vs. 断片ラミニンの比較[1]比較表
完全長ラミニン(Laminin-521またはLaminin-511)vs. 断片ラミニン511の由来、性質などをまとめました。
完全長ラミニン(Laminin-521/511) | 断片ラミニン511 | |
由来 | HEK293細胞由来のヒト組換えタンパク(完全長) | CHO/ハムスター細胞由来の組換えタンパク(完全長でない) |
純度 ※1 | 高い | 低い |
タンパクの構成 | ・多能性幹細胞本来のタンパク ・完全長なので幹細胞からの分泌タンパク等とも結合し、生体内と同様のネットワークを形成可能 |
・完全長でない(多くの幹細胞側レセプターや分泌タンパクとの結合および自己集合が不可能) ・糖鎖のパターンがヒトと異なる |
細胞機能 | 完全長タンパク質が細胞機能を維持 | 一部の細胞機能を失う可能性あり |
増殖速度 | ・4日で100%コンフルエント ・断片ラミニンより20-25%速い |
・4日で80-90%コンフルエント |
細胞形態 | 正常 | コロニーから樹状突起が出る |
細胞の遊走 | ・活発に見られる ・遊走により細胞間の接触が増え、生存率向上につながる |
・ほとんど見られない ・細胞は各コロニー内で増殖し、細胞間の接触が少ない |
長期継代 | 230継代後も核型正常 | >10継代? |
接着性 | 正常 | 接着性が強すぎ、不安定 |
※1 SDS-PAGEで純度を確認
完全長ラミニン vs. 断片ラミニンの比較[2] 調節機能
Dr. Hans Cleversらの論文にて、「ラミニンをベースにした細胞外マトリックスは、オルガノイドの形成に不可欠である。全長のタンパク質でなければ腸管幹細胞(Intestinal Stem Cells:ISC)コロニーまたはsing stem cellからde novoオルガノイド形成を誘導することができず(論文のSupp. Fig. 4i参照)、これは全長のタンパク質がそのプロセスに必要であることを示唆している。」という結論に至りました。
参考:Dr. Hans Cleversらの研究を基に開発された腸管オルガノイド培地 製品情報
完全長ラミニン vs. 断片ラミニンの比較[3] コスト
より多い細胞収量とより速い成長速度のための、平均的な継代における1細胞あたりの培地のコストは、完全長ラミニン(Laminin-521)の方が低いことを示しています。完全長ラミニン(Laminin-521)の培養システムは、上記の主要な利点とともに、時間と費用を節約することが可能になります。
平均的な継代における1細胞あたりのコスト
培地コストは、定価(※EUにおける)に基づいて計算。使用された完全長ラミニン(Laminin-521)のコーティング濃度は0.5 μg/cm2、断片ラミニンはマニュアルに従って使用。培地は0.2mL/cm2使用し、毎日培地を交換。1継代あたりの培養日数は、2種類の細胞株(HS181およびiPSC3)の平均5-6継代に基づいて計算した。
完全長ラミニン vs. 断片ラミニンの比較[4] 細胞形態
完全長ラミニンおよび断片ラミニンで培養された細胞において、細胞形態の違いが明確に示されています。
断片ラミニン上では細胞が広がらず、むしろコロニーの縁から伸びる奇妙な樹状突起/突起を有するコロニー中で増殖することが分かりました。
一方で、完全長ラミニン(Laminin-521、Laminin-511)で培養した細胞は、泡状の様な形態を有し、迅速に遊走し、より大きな集団を形成します。この細胞遊走は細胞生存に直接関連していることが分かっています(Rodin et al, submitted)。
完全長ラミニン(Laminin-521、Laminin-511)または断片ラミニン511で培養したヒトES細胞(HS181)
1日目の形態
3日目の形態
(左)完全長ラミニン511(Laminin-511)、(中央)完全長ラミニン521(laminin-521)、(右)断片ラミニン511
完全長ラミニン vs. 断片ラミニンの比較[5] 増殖速度
完全長ラミニン521(Laminin-521)、完全長ラミニン511(Laminin-511)および断片ラミニン511で培養したヒトES細胞(HS181)の増殖能を比較した結果、以下のことが明らかになりました。
- 完全長ラミニン(Laminin-521、Laminin-511)で培養した細胞の増殖速度は圧倒的に速い(コンフルエントまで1日速い)
- 強力なインテグリン相互作用のため、幹細胞培養の培養基質としてのLaminin-521は、Laminin-511よりも効率的である
完全長ラミニン(Laminin-511、Laminin-521)または断片ラミニン511で培養したヒトES細胞(HS181)の増殖速度の比較
(左)完全長ラミニン511(Laminin-511)、(中央)完全長ラミニン521(Laminin-521)、(右)断片ラミニン511で培養
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