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ラーニングコーナー

2024/10/21

抗原特異的T細胞の機能評価に 樹状細胞とCD8+ T細胞の共培養

  • 用途別細胞培養

樹状細胞(dendritic cell; DC)は、外因性の抗原を処理してCD4+およびCD8+ T細胞に提示し、免疫応答を生じさせる強力な抗原提示細胞(antigen-presenting cell; APC)です。主要組織適合抗原(major histocompatibility complex; MHC)クラスI分子上の外因性抗原のCD8+ T細胞への提示は交差提示として知られ、CD8+ T細胞の抗原特異的応答を誘導して感染症や疾患と戦うために不可欠です。そのため、DCとCD8+ T細胞の共培養は、抗原提示およびT細胞活性化・増殖メカニズムの研究に有用な手法です。共培養系で増殖したT細胞はさらに、腫瘍抗原の提示、T細胞を介した細胞傷害性、およびメモリーT細胞形成の研究に使用できます。このような研究の結果は、T細胞を介したがん治療や、持続性の免疫記憶と免疫防御を誘導するワクチンの開発に利用できる可能性があります。

この技術報告では、DCとCD8+ T細胞の共培養実験をセットアップし抗原特異的CD8+ T細胞を作製する方法、およびCD8+ T細胞の増殖、機能性、および殺傷活性の評価方法を詳しく説明します。掲載したプロトコルは、STEMCELL Technologies社内で試験および検証されており、DC/T細胞研究のワークフロー全体を信頼性高く包括的にサポートします。

本稿の内容は、STEMCELL Technologies社ウェブサイトの記事(Dendritic Cell/CD8+ T Cell Co-Culture to Assess Antigen-Specific T Cell Functionality)に基づいています。

DC/T細胞共培養ワークフローの概要

本稿のプロトコルでは、樹状細胞(DC)とCD8+ T細胞の共培養の樹立方法と、その後の機能解析オプションについて説明します。ワークフローの概要は、図1を参照してください。DCのプライミング活性の研究には6日間の短期共培養を、CD8+ T細胞の活性化、増殖、免疫記憶、および抗原への再曝露の影響の研究には10〜12日間の長期共培養をおすすめします。

DC_T_fig1_jp.png

図1. 実験ワークフロー:抗原誘導CD8+ T細胞の活性化と増殖のためのDC/T細胞共培養

  1. EasySep™ Human Monocyte Isolation Kitを使用して、新鮮ヒト末梢血Leukopak(ロイコパックまたはリューコパック)あるいは、新鮮または凍結ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単球を分離します。
  2. ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitと目的のペプチドを使用して単球を培養し、単球由来の樹状細胞(monocyte-derived dendritic cell; Mo-DC)を作製します。
  3. 同一ドナーの血液またはPBMCから、EasySep™ Human CD8+ Cell Isolation Kitを使用してCD8+ T細胞を単離します。
  4. ImmunoCult™-XF T Cell Expansion Mediumを使用して、DCとCD8+ T細胞を共培養します。
  5. 短期共培養の場合、6日後にCD8+ T細胞の増殖および活性化マーカーを評価します。
  6. 長期共培養の場合、追加のサプリメントで抗原特異的CD8+ T細胞を増殖させ、表面マーカーまたはサイトカイン産生の評価により表現型と機能を解析します。あるいは、抗原特異的CD8+ T細胞をEasySep™で濃縮し、2日間休ませてから殺傷活性を評価します。

ヒト単球とT細胞の単離

  1. Leukopak(商品コード:ST-70500)またはヒト全末梢血から、末梢血単核細胞(PBMC)を採取します。詳細は、Leukopak処理およびPBMC分離の各プロトコルを参照してください。
  2. PBMCの1画分を単球の単離のために確保します。残りのPBMCは凍結保存しておき、後でCD8+ T細胞の単離や、必要に応じて抗原提示細胞(APC)の濃縮に使用します。これにより、自家共培養系の樹立が可能になります。
  3. EasySep™ Human Monocyte Isolation Kit(商品コード:ST-19359)を使用して、PBMCからヒトCD14+CD16- 単球を単離します。
  4. 共培養系の開始準備ができたら、凍結保存した自家PBMCを解凍し一晩培養した後、EasySep™ Human CD8+ T Cell Isolation Kit(商品コード:ST-17953)を使用してCD8+ T細胞を単離します。

:PBMCは、新鮮Leukopakやヒト全血など大容量の供給源から取得できます。予め分離された新鮮または凍結PBMCを使用すれば、実験時間をさらに節約できます。

:共培養系に使用する樹状細胞およびT細胞は、自家(同一ドナー由来)または同種異系(異なるドナー由来)のいずれかです。抗原提示条件を作り出す共培養には、自家細胞の使用が推奨されます。これは、同一ドナー由来のDCとT細胞間のMHCの完全一致を意味しており、潜在的な反応性T細胞に対する抗原提示の幅が最大化されます。

Mo-DCの作製とペプチドプールによるパルス

以下の手順では、ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kit(商品コード:ST-10985)を使用して、成熟した単球由来樹状細胞(Mo-DC)を作製します。通常の方法と異なり、培養開始後5日目にMo-DCにペプチドプールをパルス(付加)します(図2参照)。手順を一部省略していますので、詳細は製品添付文書を参照してください。

  1. 培養開始0日目に、単球を適切な組織培養器に 1 x 106 cells/mL で播種します。
  2. 培養開始後3日目に、培地を新鮮な ImmunoCult™-ACF Dendritic Cell Medium(商品コード:ST-10987)に交換します。
  3. 同5日目に、ImmunoCult™ Dendritic Cell Maturation Supplement(商品コード:ST-10989)を100分の1希釈になるように直接培養物に加えます。特定の目的のペプチド(CMV (pp65) Peptide Pool [同:ST-100-0668]、Influenza (HLA Class I Control) Peptide Pool[同:ST-100-0672]、MART 1(26-35)[peptides&elephants GmbH、カタログ#EP09832_1]、CMV Sub Peptide Pool[peptides&elephants GmBH、カタログ#LB01713]など)を各 1 μg/mLの濃度で添加します。
  4. 同6日目に、ピペッティングでゆっくりと上下させ細胞を全て懸濁状態にしてから、成熟したMo-DCを回収して適切なチューブに移します。
  5. 同量の ImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Medium(商品コード:ST-10981)を添加してピペッティングでゆっくりと上下させ、細胞を培地に再懸濁して洗浄します。室温で 300 x g、10分間、遠心分離します。上清を除去して廃棄します。
  6. 細胞を ImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Medium に再懸濁します。手順5. を繰り返します。遠心分離後、上清を除去して廃棄し、細胞を ImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Medium に 5 x 105 cells/mL の濃度で再懸濁します。

DC_T_fig2_jp.png

図2. プロトコル概略:Mo-DCの作製と分化
単離した単球から成熟Mo-DCを作製します。このアプリケーションで最適な細胞収量を得るには、単球の単離に EasySep™ Human Monocyte Isolation Kit を使用することを推奨します。ImmunoCult™-ACF Dendritic Cell Differentiation Supplement を添加した ImmunoCult™-ACF Dendritic Cell Medium で3日間、37°Cで培養します。培養開始後3日目に培地を除去し、新鮮な培地に交換してさらに2日間、37°Cで培養します。同5日目に培地は変更せずに、ImmunoCult™ Dendritic Cell Maturation Supplement と目的のペプチドプールを培養物に加えます。同6日目に完全に成熟したDCを回収し、下流のアプリケーションに使用します。

注:ペプチドプールの選択
ペプチドプールは、特定のタンパク質または抗原の短いペプチド断片の混合物であり、特定のT細胞受容体(TCR)特異性を持つT細胞を刺激できます。ペプチドプールを研究に用いると、病原体やがん細胞に見られる抗原など、複雑な混合物中の特定の抗原を認識し応答するT細胞をスクリーニングおよび同定できます。選択するペプチドは、研究の興味と課題によって異なります。ここで用いるペプチドプールは、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子によってDC上に提示され、CD8+ T細胞上のTCRと相互作用して活性化と増殖を誘導します。CMV(pp65) ペプチドプール、インフルエンザ(HLAクラスIコントロール)ペプチドプール、および MART 1(26-35) ペプチドは、ほとんどの個人がこれらの抗原を認識する循環CD8+ T細胞を持っているため、多くの場合に良好なポジティブコントロールとなります。

Mo-DCとT細胞の共培養

Mo-DCとCD8+ T細胞の共培養の期間は、対象とする特定の研究課題によって異なります。樹状細胞の活性化とCD8+ T細胞のプライミングの研究には通常、6日間の短期共培養(図3参照)を行います。一方、10〜12日間の長期共培養(図4参照)を行うと、CD8+ T細胞を介した細胞傷害性アッセイなどの下流の機能アッセイに使用する抗原特異的CD8+ T細胞プールを作製できます。最適な細胞収量は、細胞の健康状態の維持に左右され、細胞の健康維持は、給餌と培地交換の推奨スケジュールを守るかどうかにかかっています。

オプション1:短期共培養

このプロトコルは、抗原特異的CD8+ T細胞の活性化と増殖を、自家抗原提示Mo-DCとの6日間の共培養系で促進するよう設計されています(図3参照)。最適な細胞収量は、細胞の健康状態の維持に大きく依存し、それは給餌と培地交換の推奨スケジュールの順守に大きく依存します。

  1. 凍結保存された自家PBMCを解凍し、5 ng/mL のヒト組換えIL-7(商品コード:ST-78053)を添加したImmunoCult™-XF T Cell Expansion Mediumで一晩培養します(解凍直後の細胞を休ませるため)。
  2. 培養開始0日目に、手順1. のPBMCからEasySep™ Human CD8+ T Cell Isolation Kit を使用してCD8+ T細胞を単離し、5 μM の細胞増殖追跡用色素 CellTrace™ Violet Proliferation Dye(Thermo Fisher Scientific、カタログ #C34557)で製品使用方法に従い細胞を標識します。10% FBSを含むクエンチ溶液を添加し、続いて同量のImmunoCult™-XF T Cell Expansion Mediumを添加して、室温で300 x g、10分間遠心分離し細胞を洗浄します。もう1回、洗浄を繰り返します。標識したCD8+ T細胞を2 x 106 cells/mLの濃度でImmunoCult™-XF T Cell Expansion Mediumに再懸濁します。
  3. ペプチドパルスしたDCの懸濁液(5 x 105 cells/mL)と0.5 mLのCD8+ T細胞の懸濁液(2 x 106 cells/mL)を24ウェル組織培養プレートの各ウェルに播種し、Mo-DCとCD8+ T細胞の比率1:4で共培養をセットアップします。
  4. 培養開始後5日目または6日目に、ピペッティングでゆっくりと上下させ全ての細胞を懸濁状態にしてから共培養液を回収し、適切な遠心チューブに移します。
  5. 等量のImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumを添加し、室温で300 x g、10分間遠心分離して細胞を洗浄します。上清を除去し廃棄します。
  6. 手順5. を繰り返し、細胞を培地に再懸濁して遠心分離します。上清を除去し、細胞のペレットをImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに再懸濁します。
  7. 細胞濃度を決定し、培地を添加して希釈し、下流のアプリケーションや解析に適した最終濃度に調製します。
  8. 細胞は、増殖や表現型の解析、およびテトラマー染色を用いた抗原特異的T細胞の定量などの下流の解析で使用できます。

DC_T_fig3_jp.png

図3. プロトコル概略:ペプチドパルスしたMo-DCとCD8+ T細胞の共培養(6日間)
同一ドナーのPBMCからCD8+ T細胞を単離します。このアプリケーションで最適な細胞収量を得るには、CD8+ T細胞の単離に EasySep™ Human CD8+ T Cell Isolation Kit を使用することを推奨します。単離したCD8+ T細胞を細胞増殖追跡用色素で標識します。ペプチドパルスしたDCとCD8+ T細胞の懸濁液を1:4の比率で播種して共培養を開始します。5〜6日後に共培養物を回収し、下流の解析に使用します。

表現型の解析には、対応するHLAクラスIテトラマー、ヒトCD8(クローンRPA-T8)、CD3(クローンSK7)、CD25(クローンBC96)、およびCD279(PD1;クローンEH12.2H7)に特異的な蛍光抗体、そして生死判別用色素 DRAQ7™(BioLegend、カタログ#424001)で細胞を染色することを推奨します。製品の推奨プロトコルに従って細胞を染色し、フローサイトメトリーで解析します(図5参照)。抗原特異的CD8+ T細胞数を定量するには、テトラマーCD8+ T細胞の頻度に手順7. で決定した細胞濃度を掛けます。

注:テトラマー染色は、抗原特異的T細胞の同定と定量に高い特異性と感度を示し、特定の抗原に対する免疫応答の研究に使用できるため、抗原特異的T細胞の解析における強力な技術です。テトラマーは、MHC-ペプチド 4分子から生物工学的に作られており、特定の抗原を認識するT細胞に安定して結合します。フィコエリトリン(PE)などの蛍光色素でテトラマーを標識すれば、フローサイトメトリーでサンプル中の抗原特異的T細胞の機能を同定および分析でき、抗原特異的T細胞の正確かつ精密な定量が可能になります。テトラマーは、ドナーのHLA対立遺伝子および細胞の活性化に用いる特定のペプチドに応じて選択します。例えば、細胞をCMV (pp65) ペプチドプールで刺激する場合は、iTAg Tetramer/PE – HLA-A*02:01 CMV pp65 (NLVPMVATV)(MBL International Corporation, カタログ#TB-0010-1)で染色します(図6の実験データ参照)。また、細胞をMART1 (26-35) ペプチドで刺激する場合は、iTAg Tetramer/PE – HLA-A*02:01 Mart-1 (ELAGIGILTV)(MBL International Corporation, カタログ#TB-0009-1)で染色します。

オプション2:長期共培養

このプロトコルは、抗原特異的CD8+ T細胞の増殖と活性化を、自家抗原提示Mo-DCとの10〜14日間の共培養系で促進するよう設計されています(図4)。最適な細胞収量は、細胞の健康状態の維持に大きく依存し、それは給餌と培地交換の推奨スケジュールの順守に大きく依存します。

  1. 凍結保存された自家PBMCを解凍し、5 ng/mLのヒト組換えIL-7を添加したImmunoCult™-XF T Cell Expansion Mediumで一晩培養します。
  2. 培養開始0日目に、手順1. のPBMCからEasySep™ Human CD8+ T Cell Isolation Kitを使用して、CD8+ T細胞を単離します。単離した細胞を2 x 106 cells/mLの濃度で、60 ng/mL のヒト組換え IL-21(商品コード:ST-78193)を添加したImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Medium に再懸濁します。
  3. 0.5 mLのペプチドパルスしたDCの懸濁液(5 x 105 cells/mL)および0.5 mLのCD8+ T細胞の懸濁液(2 x 106 cells/mL)を24ウェル組織培養プレートの各ウェルに播種し、Mo-DCとCD8+ T細胞の比率1:4で共培養をセットアップします。
  4. 培養開始後3日目に、さらに1 mLの新鮮なImmunoCult™-XF T Cell Expansion MediumとHuman Recombinant IL-7およびHuman Recombinant IL-15(商品コード:ST-78031)を各ウェルに加え、サイトカイン(IL-7、IL-15)の最終濃度を各5 ng/mLにします。
  5. 同5日目に、各ウェルの共培養物を24ウェルから6ウェル組織培養プレートに移します。さらに2 mLの新鮮培地(IL-7、IL-15を各5 ng/mL添加)を追加し、既存の2 mLの培養量を補充します。
  6. 同7日目に、6ウェル組織培養プレートの各ウェルから細胞懸濁液を2 mL分取して新たなウェルに播種することで、各共培養ウェルを2分割します。各ウェルに2 mLの新鮮培地(IL-7、IL-15を各10 ng/mL添加)を追加し、さらに3日間細胞を培養します。
  7. 同10日目に、ピペッティングでゆっくりと上下させて全ての細胞を懸濁状態にしてから回収し、適切なチューブに移します。細胞は下流の解析や機能アッセイに使用したり、組織培養プレートに播種してさらに増殖させることができます。

注:共培養開始後10日目までに、培養中のほぼすべての細胞が増殖T細胞で構成され(図6参照)、Mo-DCはまだほとんど存在しません。

DC_T_fig4_jp.png

図4. プロトコル概略:ペプチドパルスしたMo-DCとCD8+ T細胞の共培養(10 - 12日間)
同一ドナーのPBMCからCD8+ T細胞を単離します。このアプリケーションで最適な細胞収量を得るには、CD8+ T細胞の単離に EasySep™ Human CD8+ T Cell Isolation Kit を使用することを推奨します。ペプチドパルスしたDCの懸濁液とCD8+ T細胞の懸濁液を1:4の比率で播種して共培養を開始します。2〜3日ごとに継代し、サイトカインを補充します。培養開始後10日目に細胞を回収し、フローサイトメトリーによる表現型解析、サイトカイン定量、脱顆粒評価、および殺傷アッセイによるエフェクターCD8+ T細胞の殺傷活性測定などの下流の解析やアプリケーションに使用します。

以下のプロトコルとデータ例は、各図を参照してください。

  • テトラマー染色による抗原特異的T細胞の定量(図6)
  • 脱顆粒(CD107)とインターフェロンγ(IFN-γ)産生、およびCD137発現の評価(図7)
  • 抗原特異的T細胞の単離(図8A)
  • T細胞の殺傷活性評価(図8B)

T細胞の機能評価 - 脱顆粒、IFN-γ産生、4-1BB(CD137)発現

T細胞の活性化は、脱顆粒、インターフェロンγ(IFN-γ)産生、および4-1BB(CD137)発現の検出によって測定できます。それらは免疫応答に関する貴重な洞察をもたらし、潜在的な免疫療法の有効性を理解するのに役立ちます。細胞表面のCD107発現の測定は、脱顆粒を定量化する一般的な方法です。CD8+ T細胞は特定の抗原によって活性化されると脱顆粒を開始し、CD107を細胞表面に輸送し、細胞傷害性タンパク質を標的細胞に送達します(Betts et al., 2003)。CD8+ T細胞への抗原曝露はIFN-γ産生も誘導し、これは細胞内サイトカイン染色により測定できます。細胞表面の糖タンパク質CD137も抗原曝露によって誘導されます。これは、T細胞の増殖と記憶細胞の形成を促し、生存を強化し、IFN-γ産生を増加させる強力な共刺激シグナルです(Fröhlich et al., 2020)。

パート1:CD8+ T細胞リコール免疫応答に用いる抗原提示細胞の樹立

抗原特異的CD8+ T細胞の増殖には、DC/CD8+ T細胞の共培養が必要です。Mo-DCとCD8+ T細胞の共培養開始から3〜4日後に、T細胞増殖の大部分がサイトカイン(IL-15およびIL-7)によって駆動されます。したがってT細胞は、抗原に対する記憶に似たリコール応答を作り出し、検出可能なレベルのIFN-γ産生やその他の活性化マーカーを誘導するために、自家の抗原提示細胞(APC)と新鮮なペプチドで再活性化される必要があります。以下の手順では、増殖したCD8+ T細胞に添加してサイトカイン産生を測定するために用いるAPCの樹立方法を説明します。

  1. 培養開始後10日目に、CD8+ T細胞の再活性化に用いるAPCの供給源として自家PBMCを解凍します。
  2. CD3+およびCD2+ 細胞のディプリーションによりT細胞とNK細胞を除去し、自家PBMCからAPCを濃縮します。EasySep™ Human CD3 Positive Selection Kit II(商品コード:ST-17851)および EasySep™ Human CD2 Positive Selection Kit II(同:ST-17883)を EasySep™ Magnet(同:ST-18000)とともに使用することを推奨します。

    a. PBMCを5 x 107 cells/mL に希釈し、5 mLポリスチレン丸底チューブに移します。
    b. EasySep™ Human CD3 Positive Selection Cocktail II およびEasySep™ Human CD2 Positive Selection Cocktail を各150 μL/mL加え、5分間インキュベートします。
    c. 150 μL/mLの EasySep™ Dextran RapidSpheres™(キット構成品#50100)を加えて混合し、室温で5分間インキュベートします。
    d. EasySep™ Buffer(商品コード:ST-20144)を液量が2.5 mLになるまで加え、チューブを EasySep™ Magnet に入れ室温で 5 分間インキュベートします。
    e. 磁石を手に取り、1回の連続動作で磁石とチューブを反転させ、上清を新しい 5 mLポリスチレン丸底チューブに注ぎます。新しいチューブ内には濃縮された細胞が含まれます。
    f. 75 μL/mL のEasySep™ Dextran RapidSpheres™(キット構成品#50100)を、濃縮された細胞の画分に加えます。混合して、室温で1分間インキュベートします。
    g. チューブをEasySep™ Magnetに入れ、5分間インキュベートします。
    h. 磁石を手に取り、1回の連続動作で磁石とチューブを反転させ、上清を新しい 5 mLポリスチレン丸底チューブに注ぎます。
    i. 再度、チューブをEasySep™ Magnetに入れ、さらに5分間インキュベートします。
    j. 磁石を手に取り、1回の連続動作で磁石とチューブを反転させ、上清を新しい 5 mLポリスチレン丸底チューブに注ぎます。新しいチューブ内には、濃縮されたAPCが含まれます。

  3. 濃縮したAPCを300 x g、10分間遠心分離します。2.5 mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁し、300 x g、10分間遠心分離します。
  4. 上清を除去し、細胞増殖追跡用色素(5 μM の CellTrace™ Violet Proliferation Dye; Thermo Fisher Scientific, カタログ#34557)を製品使用方法に従って添加した1 mL のPBSに再懸濁します。この手順は、フローサイトメトリーで細胞を分析する際に、APCとレスポンダーT細胞を区別するのに役立ちます。10% FBSを含むクエンチ溶液を添加し、等量のImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumを添加し、300 x g、10分間遠心分離して細胞を洗浄します。
  5. 蛍光標識したAPCを1 mL のImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに再懸濁します。
  6. APCの濃縮に使用した5 mLポリスチレン丸底チューブで、以前のMo-DC成熟手順でMo-DCの活性化に使用したのと同じペプチドプールを用いて、各ペプチド 1 μg/mLでAPCをパルスします。APCの一部は、ネガティブコントロールとして未処理のままにします。APCをペプチドと37°Cで2〜16時間インキュベートします。APCに 2 mLのImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumを添加し、300 x g、10分間遠心分離して、余分なペプチドを除去します。
  7. 上清をデカントし、APCを 3 mL のImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに再懸濁し、300 x g、10分間遠心分離します。上清を再度デカントし、APCをImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに再懸濁して1 x 105 cells/mL に希釈します。APCは、下記のCD8+ T細胞の脱顆粒およびIFN-γ産生の評価に使用できます。

パート2:脱顆粒とIFN-γ産生の評価(10日間の共培養とCD8+ T細胞増殖の後)

  1. 増殖したCD8+ T細胞(「長期共培養」プロトコルで作製)を1 x 105 cells/mLに希釈します。100 μL の増殖 CD8+ T 細胞を 100 μL のペプチドパルスした蛍光標識APC(1 x 105 cells/mL;「CD8+ T細胞リコール免疫応答に用いる抗原提示細胞の樹立」プロトコルで作製)に丸底96ウェル組織培養プレート内で加え、37°Cでインキュベートします。各細胞タイプの最終濃度は 1 x 104 cells/well にする必要があります。
  2. PE anti-human CD107a (LAMP-1) antibody(クローンH4A3; Biolgend, カタログ#328607)を、APC/CD8+ T細胞の共培養に0.2 μL/well 加えます。1時間インキュベートします。
  3. BD GolgiStop™ protein transport inhibitor (Monensin)(BD Biosciences, カタログ#554724)を、製品使用方法に従って共培養に加えます。
  4. 5時間インキュベートします。
  5. プレートから細胞を回収し、フローサイトメトリーで解析します。

    注:蛍光色素標識抗体の種類は実験デザインに基づいて選択し、手持ちのパネルと併用可能か確認する必要があります。パネルにすでに使われている蛍光色素(CellTrace™ Violet Proliferation Dyeなど)は避けることを推奨します。

    フローサイトメトリー解析では、細胞表面抗原を染色した後に、IFN-γ測定用の細胞内染色を行うことを推奨します。表面抗原染色に推奨する抗体は下記のとおりです。

    ・非特異的結合を減らすブロッキング抗体に抗ヒトCD32抗体、クローンFLI8.26(商品コード:ST-60135)またはクローンIV.3(同:ST-60012
    ・蛍光色素標識抗ヒトCD8抗体、クローンRPA-T8
    ・蛍光色素標識抗ヒトCD3抗体、クローンSK7

  6. 表面染色用の抗体をサンプルに添加し、室温で15分間インキュベートします。
  7. 細胞を2回洗浄します。PBS(または抗体メーカー提供の染色バッファー)でピペッティングして細胞をゆっくりと上下させた後、500 x g、3分間遠心分離します(もう一度繰り返します)。
  8. 細胞懸濁液 1 mL当たり、1 uL の GloCell™ Fixable Viability Dye Red 780(商品コード:ST-75007)を加え、製品使用方法に従って染色します。
  9. 細胞を2回洗浄します。PBS(または抗体メーカー提供の染色バッファー)でピペッティングして細胞をゆっくりと上下させた後、500 x g、3分間遠心分離します(もう1回繰り返します)。
  10. BD Cytofix/Cytoperm™ Fixation/Permeabilization Kit(BD Biosciences, カタログ#554714)で製品使用方法に従って細胞を固定し、透過処理します。
  11. APC-conjugated anti-human IFN-γ(クローン4S.B3; BioLegend, カタログ#502511)を加え、室温で20分間インキュベートします。
  12. 細胞を2回洗浄します。PBS(または抗体メーカー提供の染色バッファー)でピペッティングして細胞をゆっくりと上下させた後、500 x g、3分間遠心分離します(もう一度繰り返します)。細胞をフローサイトメトリーで解析します(図7A参照)。

パート3:4-1BB(CD137)発現測定によるCD8+ T細胞活性化の評価

  1. 丸底の96ウェル組織培養プレートに、増殖したCD8+ T細胞(「長期共培養」プロトコルで作製)と追跡用色素で標識したAPC(「CD8+ T細胞リコール免疫応答に用いる抗原提示細胞の樹立」プロトコルで作製)を1:1の比率で加え、37°Cでインキュベートします。 両細胞タイプの最終濃度は1 x 104 cells/well にする必要があります。37°Cで16〜20時間インキュベートします。
  2. フローサイトメトリー解析では、Biolegend社の蛍光色素標識抗ヒトCD8(クローンRPA-T8)、CD3(クローンSK7)および4-1BB(クローン4B4-1)抗体、および生死判別用色素 DRAQ7™により、製品使用方法に従って細胞を染色することを推奨します。
  3. 細胞を2回洗浄してから、フローサイトメトリーで解析します(図7B)。

濃縮した抗原特異的T細胞による殺傷アッセイ

DC/CD8+ T細胞の共培養物から抗原特異的CD8+ T細胞を単離し、CD8+ T細胞殺傷活性アッセイでその活性を評価できます。以下のプロトコルでは、はじめにDC/CD8+ T細胞の長期共培養から抗原特異的CD8+ T細胞を得る方法を説明します。細胞の濃縮前に、DC/CD8+ T細胞の共培養をMART 1(26 - 35) で刺激します。続いて、共培養で増殖した抗原特異的CD8+ T細胞をPE標識テトラマー(iTAg Tetramer/PE – HLA-A*02:01 Mart-1 (ELAGIGILTV))で検出し、EasySep™ Release Human PE Positive Isolation Kit(商品コード:ST-17654)とEasySep™ Magnetを使用して単離します(図8A参照)。次に、濃縮した抗原特異的CD8+ T細胞を使って、HLA-A*02:01腫瘍細胞株 U266に対する細胞傷害性を測定する殺傷アッセイを行う方法を説明します(図8B参照)。

パート1:EasySep™による抗原特異的CD8+ T細胞の濃縮

  1. 「長期共培養」プロトコルの培養開始後10日目に、増殖したCD8+ T細胞を回収します。
  2. 細胞を、EasySep™ Buffer(商品コード:ST-20144)に2 x 107 cells/mLで懸濁します。
  3. ブロッキング抗体として、EasySep™ Anti-Human CD32 (Fc gamma RII) Blocker(EasySep™ Release Human PE Positive Selection Kit[商品コード:ST-17654]の構成品)を200 μL/mLで細胞に添加します。
  4. MART 1(26-35) 特異的なPE標識テトラマー(iTAg Tetramer/PE – HLA-A*02:01 Mart-1 (ELAGIGILTV))などのPE標識テトラマーを10 μL/mLの濃度で添加し、遮光して室温で30分間インキュベートします。

    注: テトラマーは、ドナーのHLA対立遺伝子と細胞の活性化および増殖に用いる特定のペプチドに応じて選択します。例えば、細胞をCMV (pp65) ペプチドプールで刺激する場合は、iTAg Tetramer/PE – HLA-A*02:01 CMV pp65 (NLVPMVATV) を使用します(図6の実験データ参照)。細胞をMART1 (26-35) ペプチドで刺激する場合は、iTAg Tetramer/PE – HLA-A*02:01 Mart-1(ELAGIGILTV) を使用します。

  5. 3倍量のEasySep™ Bufferを添加し、細胞を300 x g、10分間遠心分離します(ローブレーキ)。
  6. 上清を除去し、細胞を0.5 mLのEasySep™ Bufferに再懸濁し、5 mLポリスチレン丸底チューブに移します。
  7. EasySep™ Release Human PE Positive Selectionカクテルを100 μL/mLでサンプルに添加し、室温で10分間インキュベートします。
  8. EasySep™ Releasable Rapidspheres™を75 μL/mLでサンプルに添加し、室温で5分間インキュベートします。
  9. EasySep™ Bufferを添加してサンプル量を2.5 mLにします。ピペッティングで2〜3回ゆっくりと上下させて混合します。
  10. チューブに蓋をせずEasySep™ Magnetに入れ、10分間インキュベートします(1回目の磁気分離)。
  11. 磁石を手に取り、1回の連続動作で磁石とチューブを反転させ、上清を流し出します。チューブを磁石から取り外します。チューブ内には、ポジティブセレクションで分離した目的の細胞が含まれています。
  12. 細胞を2.5 mLのEasySep™ Bufferに再懸濁します。
  13. チューブに蓋をせずEasySep™ Magnetに入れ、5分間インキュベートします(2回目の磁気分離)。
  14. 磁石を手に取り、1回の連続動作で磁石とチューブを反転させ、上清を流し出します。チューブを磁石から取り外します。チューブ内には、ポジティブセレクションで分離した目的の細胞が含まれています。
  15. 細胞を2.5 mLのEasySep™ Bufferに再懸濁します。
  16. 手順13. - 14. を繰り返します(3回目の磁気分離)。

    オプション:細胞の純度を高めるために、磁気分離をもう1回追加することができます。

  17. ポジティブセレクションで分離した細胞を2.5 mLのEasySep™ Release Bufferに3分間再懸濁します。
  18. チューブを磁石に入れ、5分間インキュベートします。この手順で磁性粒子を除去します。
  19. 磁石を手に取り、1回の連続動作で磁石とチューブを反転させ、濃縮された細胞を含む上清を新しいチューブに注ぎます。
  20. 濃縮した細胞を300 x g、10分間遠心分離し、細胞ペレットをImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Medium(各5 ng/mLのIL-7、IL-15を添加)に5 x 105 cells/mLで再懸濁します。U底96ウェル組織培養プレートで37°C、2日間培養します。
  21. 細胞を2日間休ませた後、以下で説明する殺傷アッセイを実施して、濃縮した抗原特異的CD8+ T細胞の殺傷活性を評価します(結果は図8B参照)。

パート2:T細胞の殺傷活性評価

  1. 培養で増殖した後に、PE標識テトラマーおよびEasySep™ Release Human PE Positive Selection Kitで濃縮した抗原特異的CD8+ T細胞を使用します。
  2. テトラマーで濃縮したCD8+ T細胞を回収し、5 mLポリスチレン丸底チューブに移し、300 x g、10分間遠心分離します。上清をデカントし、新鮮なImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに細胞を最終濃度3 x 105 cells/mLで再懸濁します。抗原特異的CD8+ T細胞を希釈して3 x 105、1 x 105、および0.3 x 105 cells/mLの懸濁液を調製します。
  3. 標的細胞を調製します(HLA-A*02:01腫瘍細胞株、U266など)。

    ⅰ. U266細胞を、5 μMのeBioscience™ Cell Proliferation Dye eFluor™ 670(Thermo Fisher Scientific、カタログ#65-0840-85)で製品使用方法に従い標識します。10% FBSを含むクエンチ溶液を添加し、等量のImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumを加えて300 x g、10分間遠心分離して細胞を洗浄します。
    ⅱ. 蛍光標識した標的細胞を、1 mLのImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに再懸濁します。
    ⅲ. Mo-DCの活性化に用いたのと同じペプチド(「Mo-DCの作製とペプチドプールによるパルス」の項、5日目の手順3. 参照)をペプチドあたり1 μg/mL添加し、37°Cで少なくとも2時間インキュベートします。ペプチド未処理のU266細胞ネガティブコントロール群を設定します。
    ⅳ. 2 mLのImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumを添加し、余分なペプチドを洗浄します。細胞を300 x g、10分間遠心分離します。1 mLのImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumに再懸濁します。
    ⅴ. ペプチドパルスした、またはネガティブコントロールのU266標的細胞株をImmunoCult-XF™ T Cell Expansion Mediumで1 x 105 cells/mLに希釈します。

  4. 標的細胞を、U底96ウェル組織培養プレートに1 x 104 cells/wellで添加します。エフェクター細胞(CD8+ T細胞)を、エフェクター/標的(E/T)比 3:1、1:1、0.3:1の濃度曲線を確立する濃度で添加します。
  5. 標的細胞とエフェクターCD8+ T細胞を4〜6時間インキュベートし、殺傷を誘導します。
  6. 96ウェルプレートを500 x g、3分間遠心分離します。各ウェルから150 μLの上清をデカントします。細胞を150 μLの氷冷PBSに再懸濁します。96ウェルプレートを500 x g、3分間遠心分離します。各ウェルから150 μLの上清をデカントします。再び、150 μLの新鮮PBSを各ウェルに加えて細胞を再懸濁し、500 x g、3分間遠心分離します。各ウェルから150 μLの上清をデカントします。
  7. 80 μL/wellのAnnexin V Binding Buffer(商品コード:ST-100-0334)に、0.2 μL/wellのPE標識アネキシンV (同:ST-100-0331)および1/400の7-AAD色素(同:ST-75001)を添加してAnnexin V染色溶液を調製します。PBSで洗浄した細胞を80 μL/wellのAnnexin V染色溶液に再懸濁し、暗所で室温、20分間インキュベートします。
  8. 細胞をフローサイトメトリーで解析します。eFluor™ 670で蛍光標識したU266標的細胞をゲーティングして殺傷を評価し、アポトーシスを起こした標的細胞(アネキシンV/7-AAD)または死んだ標的細胞(総アネキシンV)の頻度を評価します。

ケーススタディ:細胞傷害活性を示す抗原特異的T細胞

本ケーススタディでは、ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitで作製し目的のペプチドでパルスしたMo-DCが、CD8+ T細胞との共培養において抗原特異的CD8+ T細胞の増殖を促すことを示す結果を紹介します。Mo-DCは、6日間の短期共培養(図5)および10日間の共培養(図6)で、ペプチド特異的CD8+ T細胞の増殖を促進しました。増殖したCD8+ T細胞は、CD107発現による脱顆粒(図7A、7C)、IFN-γ産生(図7A、7C)、活性化マーカー 4-1BB(CD137)の発現(図7B、7C)、およびフローサイトメトリーによる細胞傷害性殺傷活性(図8)の評価において、抗原特異的な応答を示しました。

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図5. Mo-DCは、6日間の共培養後にCMVペプチド特異的CD8+ T細胞の増殖を促進
Mo-DCをImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitで作製し、(A)ペプチドなし、または(B)CMV (pp65) ペプチドプールを添加して培養しました。EasySep™ Human CD8 T Cell Isolation Kitで単離した、濃縮自家CD8+ T細胞を、細胞増殖追跡用色素(450 nm)で標識した後、ペプチドを付加した成熟Mo-DCと4:1(CD8+ T細胞/樹状細胞)の比率で共培養しました。5〜6日間の共培養後、細胞を回収して抗ヒトCD8およびCD3抗体、DRAQ7™生死判別用色素、および活性化マーカーのヒトCD25およびCD279(PD1)の抗体で染色しました。細胞をフローサイトメトリーで解析し、CMVペプチドで刺激したCD8+ T細胞の増殖と活性化を生存T細胞上でゲーティングしました。

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図6. Mo-DCは、10日間の共培養後にCMVペプチド特異的CD8+ T細胞の増殖を促進
Mo-DCをCMVクラスIペプチドプールでパルスし、CD8+ T細胞と共培養すると、CMVペプチド特異的CD8+ T細胞の増殖を促進しました。Mo-DCは、ImmunoCult™ Dendritic Cell Culture Kitで作製し、CMV (pp65) ペプチドプールまたはCMVクラスIペプチドプールを付加しました。EasySep™ Human CD8 T Cell Isolation Kitで単離した濃縮自家CD8+ T細胞を、ペプチド付加した成熟樹状細胞に4:1(CD8+ T細胞/樹状細胞)の比率で加えました。共培養の最初の3日間は組換えヒトIL-21を添加し、次の7日間はさらに組換えヒトIL-7およびIL-15を添加しました。培養物は、CD8+ T細胞増殖を促進するため2〜3日ごとに分割し、培養開始後10日目に回収しました。細胞を蛍光色素標識抗ヒトCD8抗体および抗ヒトCD3抗体、HLA-A*02:01 CMV pp65 (NLVPMVATV) クラスIテトラマー、DRAQ7™生死判別用色素で染色し、フローサイトメトリーで解析しました。全サンプルを生存T細胞上でゲーティングしました。(A)ペプチドパルスなしのコントロール、(B)CMV pp65ペプチドプールでパルスしたMo-DC、および(C)CMVクラスIペプチドプールでパルスしたMo-DCは、共培養でそれぞれ0.16%、13.6%、および20.3%の生存テトラマーCD8+ T細胞を生じ、CMV特異的CD8+ T細胞を>200倍に増殖させました(データ非掲載)。データは、1名のCD8+ T細胞ドナーに由来するDC/T細胞共培養の、各ウイルスペプチドプールに対する代表例を示しています。

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図7. 共培養で増殖したCD8+ T細胞の抗原特異的応答
自家抗原提示細胞(APC)は、EasySep™細胞分離キットを使用して、ディプリーション専用プロトコルに従い凍結保存PBMCからCD2およびCD3細胞をディプリーションして調製しました。次に、濃縮したAPCを蛍光色素で標識し、CMVウイルスペプチドプールを付加するか、未処理のまま(ネガティブコントロール)にしました。
(A)増殖したCD8+ T細胞による脱顆粒およびIFN-γ応答を測定しました。増殖したCD8+ T細胞をAPCと1:1の比率で4〜6時間インキュベートしました。脱顆粒(CD107)は、共培養開始時のT=0にPE標識抗ヒトCD107を添加して評価しました。モネンシンをT=1時間で添加し、T=6時間で培養物を回収し、細胞を表面マーカーの抗ヒトCD3および抗ヒトCD8、および固定可能な生死判別用色素(780nm)で染色しました。抗ヒトIFN-γ抗体は、固定および透過化ステップの後に添加しました。(B)増殖したCD8+ T細胞の4-1BB (CD137) 発現を測定しました。増殖したCD8+ T細胞をAPCと1:1の比率で18時間、共培養しました。細胞をPE標識テトラマー HLA-A*02:01 CMV pp65 (NLVPMVATV) クラスIテトラマー、抗ヒトCD8、および抗ヒトCD137で染色し、続いて生死判別用DRAQ7™で染色し、フローサイトメトリーで解析しました。(C)増殖したCD8+ T細胞によるIFN-γ、CD107、および4-1BB (CD137) の発現の概要。グラフは、フローサイトメトリーで測定した、増殖したCD8+ T細胞による脱顆粒(CD107)、IFN-γ産生、および4-1BB (CD137) 活性化の概要を示しています。すべての機能的応答は、フローサイトメトリーで生存CD8CD3レスポンダー細胞上にゲーティングして細胞を取得した後に評価しました(2名のドナー由来のn = 3の独立した培養物;バーは平均 ± SEM)。

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図8. テトラマーとEasySep™による増殖抗原特異的細胞の濃縮は、抗原特異的殺傷活性を改善
(A)増殖した CD8+ T細胞を PE標識HLA-A*02:01 MART 1(26-35) (ELAGIGILTV) テトラマーで標識し、次に EasySep™ Release Human PE Positive Selection Kit で濃縮しました。テトラマー陽性の増殖CD8+ T細胞の濃縮前後の純度はそれぞれ5%と83%でした。単離した抗原特異的エフェクターCD8+ T細胞を5 ng/mL IL-7およびIL-15で2日間培養した後、殺傷アッセイに使用しました。(B)Mo-DCでプライミングした増殖CD8+ T細胞の殺傷活性を測定しました。標的細胞としてHLA-A*02:01発現腫瘍細胞株を用いました。標的細胞を蛍光色素(670 nm)で標識し、MART 1(26-35) ペプチドを付加するか、ネガティブコントロールとして未処理のまま(破線)にしました。未濃縮(灰色の線)およびテトラマーとEasySep™で濃縮した(橙色の線)MART 1(26-35) 増殖CD8+ T細胞を腫瘍標的細胞とさまざまなエフェクター/標的(E/T)比で4時間インキュベートした後、蛍光標識アネキシンVおよび7-AAD色素で染色して、フローサイトメトリーで解析しました。アネキシンVおよび7-AAD染色を蛍光色素陽性(670 nm)の標的細胞で分析しました。データは、独立した2名のドナーを代表するものです。

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