ラーニングコーナー
2020/01/26
ヒト多能性幹細胞の品質確保における課題 - Nature Research Round Table -【E-Learning】
- 用途別細胞培養
2019年にロンドンで開催された「Ensuring Human Pluripotent Stem Cell Quality」と題する会議では、ヒト多能性幹細胞(hPSC、hES/iPS細胞)の品質保証に関わる課題を総合的に取り上げ、最先端の研究者による討論が繰り広げられました。
ご興味のあるセッションから、ウェビナーをぜひチェックしてみてください。
(*動画の視聴にはSTEMCELL Technologies社ホームページへのログインが必要です)
会議の概要
STEMCELL Technologies社は科学を進歩させるというミッションの一環として、
Nature Researchと提携して「hPSC品質の確保における課題」と題するNature Research Round Tableを開催いたしました。
ロンドンのSpringer Nature本部にグローバルな専門家が集まり、基礎生物学研究から治療への応用に至るまで、hPSCの使用に影響を与える最も核心的な問題に取り組みました。
3つのセッションでは、hPSC品質に関する一連の講演とそれに続くパネルディスカッションが行われました。当日の内容をどなたでもご視聴いただけるよう、ウェビナーとして公開いたしました。
セッション1:hPSCの多能性とバンキング
パネルディスカッション:多能性の定義と維持、およびhPSC細胞株の登録とバンキング
司会:Dr. Ludovic Vallier(Wellcome Trust Sanger Institute)、
Dr. Joanne Mountford(Glasgow大学)
内容:セッションの基調講演者がフォーラムからの質問に答え、
講演で提起されたトピックに関するコンセンサスを評価します。
多能性の評価
演者:Dr. Peter Andrews(Sheffield大学幹細胞生物学センター、共同ディレクター)
内容: ES/iPS細胞に関して「多能性」という用語が何を意味するか、
この用語がどのように進化したか、そして既存のアッセイの比較により多能性評価の方法を
説明します。
ヒト多能性幹細胞バンキングのためのHLAタイピングで考慮すべき事項
演者:Dr. David Turner(スコットランド国立輸血事業)
内容:臨床試験で使用するhPSC株のバンキングに関わる免疫学的に考慮すべき事項を
説明します。Turner博士は、組織適合性と免疫遺伝学(H&I)研究所で臨床移植のための
ドナー患者HLAマッチングを研究しています。
HLAに関してはこちらもご参考ください(ベリタスHLAページ)。
https://www.veritastk.co.jp/hla/whatshla.html
多能性幹細胞バンキングの基準
演者:Dr. Glyn Stacey(国際幹細胞バンキングイニシアティブ(ISCBI: International
Stem Cell Banking Initiative)、ディレクター)
内容:多能性幹細胞(PSC)バンキングの基準について説明します。
PSCの科学的課題、倫理の標準化、幹細胞バイオバンクの役割、
そして細胞療法のための最良の実践方法に焦点を当てています。
セッション2:hPSCのゲノム編集とゲノム完全性
パネルディスカッション:ゲノム編集されたhPSC株の品質管理のための最良の実践方法
司会:Dr. Peter Andrews(Sheffield大学)、Dr. Martin Pera(Jackson研究所)
内容:セッションの基調講演者がフォーラムからの質問に答え、
講演で提起されたトピックに関するコンセンサスを評価します。
ヒト多能性幹細胞における、獲得およびバックグラウンド遺伝的変異の識別
演者:Dr. Florian Merkle(ケンブリッジ大学)
内容:遺伝子編集中の品質管理、特に日常的な培養中に発生する遺伝的変異、および遺伝子編集中に獲得される可能性のある遺伝的変異の意味について語ります。
ヒト多能性幹細胞のゲノム編集
演者:Dr. Ludovic Vallier(Wellcome Trust Sanger Institute)
内容:hPSCのゲノム編集に関する考慮事項について説明します。Vallier博士が関わるケンブリッジ生物医学研究センターのコア施設では、疾患モデリングおよび細胞療法開発のための、ゲノム編集されたiPS細胞株の提供サービスを行っています。
ヒト多能性幹細胞の適応プロセス
演者:Dr. Ivana Barbaric(Sheffield大学、幹細胞生物学センター)
内容:hPSCの培養で獲得される遺伝的変化と、それらの検出方法、そして研究や下流の臨床治療への影響について語ります。
ヒト多能性幹細胞のゲノム完全性
演者:Dr. Martin Pera(Jackson研究所、国際幹細胞イニシアティブ(ISCI: International Stem Cell Initiative))
内容:hPSCの培養と分化の間に発生する頻発遺伝子変異の生物学的影響について説明します。
セッション3:細胞治療のためのhPSC株
パネルディスカッション:細胞療法のためのヒト多能性幹細胞株
内容:基調講演者がフォーラムからの質問に答え、
講演で提起されたトピックに関するコンセンサスを評価します。
ヒト胚性幹細胞をもちいた網膜細胞療法
演者:Dr. Peter Coffey(University College London)
内容:失明の幹細胞治療で初の臨床試験となったロンドン失明治療プロジェクトとの研究を
共有し、臨床試験のための細胞品質要件を議論します。
疾患モデルとしてのヒト多能性幹細胞
演者:Dr. Christine Mummery(Leiden大学医療センター)
内容:疾患モデリングのためのhPSCの使用と、ゲノムの完全性、定期的な検査、
論文の要件などに求められる基準を説明します。
主要な講演者紹介
Peter Andrews, MBA, PhD
Professor The University of Sheffield
シェフィールド大学幹細胞生物学センター、共同ディレクター。hPSCの生物学、特に運命決定のメカニズム、および長期培養による遺伝的変化に対する感受性に焦点を当てた研究を行う。以前は多能性幹細胞プラットフォームを指揮し、国際幹細胞イニシアティブ(ISCI)を調整して、ヒトES細胞の標準マーカーと培養条件の特性評価に取り組んできた。現在はhPSCの後天的な遺伝的変異体の起源と潜在的結果に関するデータを照合し監視する研究グループの設立を模索している。
Christine Mummery, PhD
Professor and Chair of Developmental Biology
Leiden University Medical Centre
ヒトES細胞由来心筋細胞の先駆的な研究者で、心筋梗塞後のマウス心臓に初めてそれを注入した。現在、ヒトiPS細胞に基づいた心血管疾患モデルを開発している。2007年、Harvard Stem Cell Institute/Radcliffe Instutute共同研究員。現在、ISSCR理事・副会長、オランダ王立科学アカデミーメンバー。
Malin Parmar, PhD
Professor
Lund University
発達中の脳の細胞運命決定を研究し結果を幹細胞に適用することにより、パーキンソン病治療のための新しい細胞療法をもたらすことに焦点を当てている。彼女のグループは、中脳ドーパミンニューロンを生成するための神経の直接転換技術も開発している。現在は、ヒト幹細胞の制御された分化を特定サブタイプのニューロンに効率的に誘導する方法に焦点を当てて研究している。
Peter Coffey, PhD
Professor
University College London and University of California
網膜疾患に幹細胞療法をもたらすため、2007年にロンドン失明治療プロジェクトを設立した。iPSC由来RPE細胞を用いて加齢に伴う眼疾患による視力低下を抑える彼の研究により、失明治療で最初の臨床幹細胞試験が最近行われた。現在、UCSB神経科学研究所教授、幹細胞生物学&工学センター共同ディレクター。
hPSC品質の確保をサポートする製品
STEMCELL Technologies社ではヒト多能性幹細胞の培養や解析に用いる高品質な製品のご提供を通じて、hPSC品質保証をサポートしております。各ステップにおすすめの製品を以下にご紹介いたします。
維持培養:mTeSR™ Plus
緩衝作用(pH)の改善とFGF2の安定化を実現した、ヒトES/iPS細胞維持用の無血清培地です。
培養中の培地酸性化を抑えることで、遺伝的変異を含むhPSCへのダメージを軽減します。培地交換も週2回で問題ありません。
継代:ReLeSR™
hPSCを細胞塊として継代(クランプ継代)するための、酵素フリーの解離試薬です。未分化細胞を選択的に剥離し、最適なサイズの細胞塊を簡単に生成できますので、手作業で選択やスクレイピングを行う必要はありません。
【関連リンク】
クランプ継代はシングルセル継代と比較して、遺伝的変異を含むhPSCへのダメージが少なく、細胞品質の確保に有利な継代方法です。
多能性の評価:STEMdiff™ Trilineage differentiation kit
hPSCの3胚葉分化能を評価するための、簡便なアッセイキットです。各胚葉専用の完全培地をもちいて単層培養することで、1週間以内に多能性を検証することができます。従来のテラトーマアッセイやEB法に代わる、低コストで再現性の高い、明確な結果を得られる方法です。
遺伝的変異の検出:hPSC Genetic Analysis Kit
hPSCの一般的な核型異常をスクリーニングするためのqPCRベースのキットです。他の検出法に比べ、迅速かつ費用対効果が高いことが特長です。
【関連リンク】
核型異常の頻度や、検出方法の比較についてご紹介しています。
クローニング:CloneR™
hPSCのクローニング効率とシングルセル生存率を向上させるための無血清サプリメントです。シングルセルへの馴化過程なしでクローン細胞株を安定して生成させることで、遺伝的異常の獲得リスクを最小化します。
【関連リンク】
その他:未分化マーカー抗体、基底膜、凍結保存培地など
hPSCの品質保証をサポートする製品全般をご紹介しています。