ラーニングコーナー
2018/05/07
あなたのES/iPS細胞は正常?異常?!(勉強コーナー:ヒトES/iPS細胞における遺伝的変化の原因)
- 用途別細胞培養
再生医療に向けて、ヒト多能性幹細胞(ヒトES/iPS細胞、hPSC)から分化させた細胞等を使用して臨床応用が進む中、細胞品質に新たな焦点が当てられています。hPSCsで同定された反復性遺伝子異常は、ヒトのがんにおいても観察されるので、これらの細胞を治療用途に使用することに対して安全性への懸念があります。hPSCsにおいてもっとも異常を受けやすい染色体は、1, 8, 10, 12, 17, 18, 20およびXと報告されています。hPSCs培養のバリアントの出現を最小限にするための対策を取ることが可能ですが、現在の細胞遺伝学的分析手法では、培養物中の低レベルのモザイク現象を検出することができません。
※本稿では、ヒト多能性幹細胞を「hPSC」と表記しております。
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ウェビナーのご紹介
ヒト多能性幹細胞の遺伝的安定性
「hPSCの遺伝的変化の原因および結果の議論」
演者
- Dr. Peter Andrews (Professor, The Sheffield University)
- Dr. Ivana Barbaric (Lecturer and Principal Investigator, The Sheffield University)
トピック
- hPSCにおける反復性遺伝子異常
- 培養におけるhPSCの遺伝変異の出現、および持続性における突然変異および選択の役割
- hPSCのシングルセル継代における選択圧(淘汰圧):コロニー形成を制限する複数のボトルネック
- hPSC培養におけるモザイク現象の検出
- 再生医療におけるhPSC遺伝変化の示唆
概要
ヒト多能性幹細胞(hPSC)はヒト疾患モデル化に貴重なツールで、また再生医療および創薬に使用するための分化細胞の供給源です。医学応用においてhPSCを使用するための不可欠な前提条件は、hPSCの長期間培養に対する遺伝的安定性の保証です。しかし、hPSCは遺伝的変化を獲得することでin vitroで適応することができるため、それらが分化および/または死細胞の影響を受けにくくします。
成長速度の増加と相まって、hPSCの遺伝的変化の存在は癌細胞の特徴と類似しており、臨床応用におけるhPSCの安全な使用に関する懸念が高まっています。
hPSCにおける遺伝的変化の原因と結果を調べることで、hPSC培養におけるそれらの発生を最小限にするアプローチを知るのに役立つでしょう。
hPSCの選択圧およびドミナントネガティブ突然変異を明らかにする全エキソームシーケンシング
「世界の100株以上のhES細胞株の全エキソームシークエンシングにより明らかにされた、hPSC培養における遺伝子変異および再生医療などの用途における高品質なhPSC維持の重要性」
演者
- Prof. Kevin Eggan (Professor, Harvard University)
- Dr. Florian Merkle (Principal Investigator, University of Cambridge)
トピック
- 世界の100株以上のhES細胞株の全エキソームシークエンシング
- intrinsic biologyについて学んだ教訓
- p53遺伝子変異の自発的獲得またはエンリッチメント
- 発生生物学や疾患モデリングおよび再生医療へ応用するため、高品質なhPSCの維持の重要性
当ウェビナーのプレゼンテーションに関する議論は、Nature誌に紹介されました
参考文献
製品紹介
細胞品質のチェックツール
hPSC遺伝子解析キット(hPSC Genetic Analysis Kit、製品コード:ST-07550)
プライマー/プローブのミックスが含まれています。複数のヒトhPSC株に対し遺伝子スクリーニングが可能で、迅速かつ費用対効果の高いqPCR-basedキットです。
多能性の評価ツール
ヒトES/iPS細胞の3胚葉分化能評価キット(STEMdiff Trilineage Differentiation Kit、製品コード:ST-05230)
既存あるいは新規に樹立されたhPSC株の3胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)への分化能を評価する簡便なアッセイキットです。キットに含まれる完全培地とモノレイヤー培養プロトコールによって、1週間以内に再現性良く多能性を評価します。研究室で維持している細胞株や、新たに樹立した細胞株の品質管理を簡便におこなえます。