ラーニングコーナー
2020/11/17
ヒト多能性幹細胞培養のためのトラブルシューティングガイド
- 用途別細胞培養
この技術ヒント集では、ヒト胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞を培養する際に頻繁に直面する問題と、その解決策となりうる情報を提供しています。
併せてこちらも(https://www.stemcell.com/troubleshooting-tips-for-hpsc-culture.html)ご確認ください。
その他のプロトコール、ヒントやコツについては多能性幹細胞培養のためのメソッド・ライブラリー(Methods Library for Pluripotent Stem Cell Culture: https://www.stemcell.com/technical-resources/methods-library/cell-culture.html)をご参照ください。
問題点1:培養中、分化が過剰に(>20%)進行してしまう
- ご使用の完全培地(例: mTeSR™ Plusまたは mTeSR™1)について、2 - 8°Cでの保存期間が2週間以内のものである事を確認してください。
- 分化してしまった領域は継代に先立って除去するようにしてください。
- 培養プレートは、一度に連続して 15分以上インキュベーターから出しておく事がないようにしてください。
- 継代後にできる細胞塊の大きさが均一になるようにしてください。
- 継代は大部分のコロニーが大きく、細胞が稠密に詰まり、端に比べて中心部分の密度が高くなったらおこなうようにしてください。
コロニーは大きくなりすぎないようにしてください。 - 継代では細胞塊を少なめに播いてコロニーの密度を下げてください。
- お使いの細胞株や培養系の感受性が通常よりも高い可能性がある場合には、継代の際にReLeSR™のインキュベーション時間を短縮してください。
問題点2:ReLeSR™を使用して得られる細胞塊のサイズが理想的なものにならない
細胞塊のサイズが大きすぎる(例:200 μmを超える場合など)
- 細胞塊を上下にピペッティングして少し崩してください。単細胞浮遊液(シングルセル・サスペンジョン)にならないようにしてください。
- ReLeSR™でのインキュベーション時間を1-2分延長してください。
細胞塊のサイズが小さすぎる(例:50 μmに満たない場合など)
- 細胞解離の細胞塊に対する操作を最小限にしてください。
- ReLeSR™でのインキュベーション時間を1-2分短縮してください。
問題点3:継代プロトコールの際に得られる細胞塊が大きすぎる
- Gentle Cell Dissociation Reagentでのインキュベーション時間を延長してください。
- 細胞塊を上下にピペッティングする回数を増やしてください。
- 酵素フリーの継代用試薬(細胞解離用試薬)を添加する前にD-PBS (Ca2+, Mg2+不含)で洗浄するステップを入れてください。
問題点4:ReLeSR™を使用するとコロニーと一緒に分化した細胞も剥がれてしまう
- ReLeSR™でのインキュベーション時間を1-2分短縮してください。
- 室温(15 - 25°C)でのインキュベーション時間を短縮してください。
問題点5:細胞が付着して残ってしまい、細胞を掻きとらないとプレートから剥がす事ができない。
- mTeSR™ Plus または mTeSR™ 1によるヒト多能性幹細胞維持の技術マニュアル(Maintenance of Human Pluripotent Stem Cells in mTeSR™ Plus: https://www.stemcell.com/products/mtesr-plus.html#section-product-documents または Maintenance of Human Pluripotent Stem Cells in mTeSR™1: https://www.stemcell.com/products/mtesr1.html#section-product-documents)のセクション5.0に記載されている用法に従って継代用試薬を使用していることを確認してください。
- インキュベーション時間を1-2分延長してください。
問題点6:プレーティング後の細胞接着率が悪い
- 最初に播く細胞塊の数を(2-3倍に)増やし、より高密度の状態での培養を維持するようにしてください。
- 懸濁液の中で細胞が凝集する時間を最小限にするため、継代用試薬(ReLeSR™ や Gentle Cell Dissociation Reagent)で処理した後は素早く作業をおこなうようにしてください。
- 使用している細胞株・培養系が通常よりも感受性が高いと考えられる場合には、継代用試薬でのインキュベーション時間を短縮してください。
この事は細胞がコロニー中で多層化する前に継代をおこなう場合には特に重要です。 - 細胞塊を望ましいサイズに粉砕するためのピペッティングを、過剰におこなわないようにしてください。代わりに、継代用試薬でのインキュベーション時間を1-2分延長してください。この操作は、コロニー内の細胞密度が非常に高く、細胞塊の粉砕が難しい場合には特に重要です。
- Vitronectin XF™でプレートをコーティングする際、非組織培養処理(non-tissue culture-treated)プレートを使用するようにしてください。
一方、Corning® Matrigel®(Corning社, 製品コード:#354277)でプレートをコーティングする際には、組織培養処理(tissue culture-treated)プレートを使用するようにしてください。