特集・クローズアップ
2020/04/15
いま見直すべき、ヒトES/iPS細胞の「品質管理」
- 用途別細胞培養
ES/iPS細胞らしさを維持するためには?
ヒト多能性幹細胞(hPSC、ES/iPS細胞)を用いて信頼性の高い研究を進めるためには、自己複製能と3胚葉分化能を兼ね備えたhPSCを適切に維持培養することが欠かせません。研究室でhPSCを培養するにあたって何に注意すればよいのでしょうか。
本稿では、hPSC培養で獲得しうる変異とそれらを回避するためポイントなど、hPSCの品質確保に関する情報をまとめました。
動画のご紹介
ヒト多能性幹細胞(hPSC)の生物学の概要、hPSCの品質と特性を評価する方法、プレートコーティング、培地の選択肢、継代から凍結保存までhPSC培養を維持する方法を動画で紹介
Complete a Virtual Training Course on Pluripotent Stem Cell Quality and Maintenance
(動画の視聴にはSTEMCELL Technologies社ウェブサイトにて登録が必要です)
高品質なhPSCの維持培養のために
維持培養のポイント、注意すべき点は?
ES/iPS細胞の維持培養で気を付けるべき5つのポイント(細胞数、核型・遺伝子、pH、分化能、未分化)をはじめ、基底膜、継代、凍結保存の注意点を解説します。
ヒトES/iPS細胞の継代において、シングルセル継代ではクランプ継代に比べて望ましくない選択圧がかかり遺伝的異常を獲得しやすいことが報告されています。
維持培養に役立つ製品
維持培養用培地:mTeSR™ Plus-cGMP
緩衝作用(pH)の改善とFGF2の安定化を実現した、ヒトES/iPS細胞維持用の無血清培地です。
培地の酸性化を抑えることで、遺伝的変異を含むhPSCへのダメージを軽減します。培地交換も週2回で問題ありません。
ヒトES/iPS細胞の維持培養における、プレートのコーティングとクランプ継代などの方法を日本語簡易マニュアルにまとめました。
継代用剥離試薬:ReLeSR™
hPSCを細胞塊として継代(クランプ継代)するための、酵素フリーの解離試薬です。
未分化細胞を選択的に剥離し、最適なサイズの細胞塊を簡単に生成できますので、手作業で選択やスクレイピングを行う必要はありません。
細胞品質の重要性とアッセイ方法
細胞の品質管理はなぜ重要か?
hPSCの遺伝的変異は珍しいことではなく、バンキングされている株の約20%に核型異常が見られたという報告もあります。
hPSCに関わるワークフロー全体を通して、複数のステップ(リプログラミング、維持・継代培養、ゲノム編集、分化など)で遺伝的変異を獲得する可能性があります。
品質管理に役立つ製品
遺伝的変異のスクリーニング:hPSC Genetic Analysis Kit
hPSCの一般的な核型異常をスクリーニングするためのqPCRベースのキットです。他の検出法に比べ、迅速かつ費用対効果が高いことが特長です。
多能性の評価:STEMdiff™ Trilineage differentiation kit
hPSCの3胚葉分化能を評価するための、簡便なアッセイキットです。各胚葉専用の完全培地をもちいて単層培養することで、1週間以内に多能性を検証することができます。従来のテラトーマアッセイやEB法に代わる、低コストで再現性の高い、明確な結果を得られる方法です。
品質管理に関するE-learning
2019年にSTEMCELL Technologies社とNature Researchが共催したNature Research Round Tableでは、hPSCの品質保証に関わる課題を最先端の専門家が討論しました。
hPSCの品質について解説したウェビナーをまとめました。品質維持と評価、遺伝的安定性、データ品質と規格など5つのテーマをご紹介します。
hPSCの品質で注意すべきポイントは、①ゲノム完全性(恒常性)、②多能性、③遺伝子・マーカー発現、④エピジェネティックランドスケープ、⑤培養システム・形態です。
品質管理のお役立ちツール
hPSCメンテナンススケジュールのテンプレートなどがダウンロードできます。
(STEMCELL Technologies社ホームページへのログインが必要です)。