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ラーニングコーナー

2020/12/15

ES/iPS細胞の凍結保存と融解

  • 用途別細胞培養

この技術ヒント集では、ヒト多能性幹細胞の凍結と融解に関するポイントをご紹介しています。

維持培地にmTeSR™1mTeSR™ Plus cGMP、または TeSR™-E8™を使って6ウェルプレートで培養したヒトES/iPS細胞を、それぞれmFreSR™ (mTeSR™1またはmTeSR™ Plusで培養した場合)、 CryoStor® CS10(細胞塊の場合)、FreSR™-S(シングルセルサスペンジョンの場合)で凍結保存・融解する方法について記載しています。

全ての手順については以下のマニュアルをご参照頂くか、株式会社ベリタスまでご連絡ください。

ヒト多能性幹細胞の維持培養 技術マニュアル

・mTeSR™1を使用した方法 (Maintenance of Human Pluripotent Stem Cells in mTeSR™1 )
・mTeSR™ Plusを使用した方法 (Maintenance of Human Pluripotent Stem Cells in mTeSR™ Plus)
・TeSR™-E8™を使用した方法 (Maintenance of Human Pluripotent Stem Cells in TeSR™-E8™)

培養した多能性幹細胞の回収と凍結保存は、通常の継代をおこなうタイミングでおこないます。保存バイアル1本には、6ウェルプレート1ウェル分の細胞塊を保存します。6ウェルプレート以外の培養器をお使いの場合には、容量に従って調整してください。

併せてこちらもご確認ください。(https://www.stemcell.com/technical-resources/methods-library/cell-culture/pluripotent-stem-cells/maintenance-of-pluripotent-stem-cells/cryopreservation-and-thawing-of-es-ips-cells.html

細胞塊とシングルセル、どちらで凍結保存すべきか?

多能性幹細胞の凍結保存を、細胞塊またはシングルセルでおこなう長所と短所をご紹介します。また、それぞれの操作のポイントもご確認ください。

細胞塊 シングルセル
長所
  • 細胞塊の場合、シングルセルから凝集塊(クランプ)への移行が必要がないため、リカバリーがより速くできる
  • 細胞塊の場合、使用が簡単(ROCKインヒビターは不要)
  • シングルセルの場合、バイアル間で一貫性がある
  • シングルセルの場合、細胞数をより正確にカウントできる
短所
  • 細胞塊の場合、バイアルごとの細胞数(細胞塊の数)にばらつきがある
  • 細胞塊の場合、最初の継代のタイミングが予測しにくい
  • シングルセルの場合、最初の24時間の間にROCKインヒビター処理をおこなう必要がある

細胞塊での凍結・融解時に推奨されること

  • 凍結保存培地は、CryoStor™CS10 または mFreSR™(mTeSR™1 または mTeSR™ Plusで培養した場合のみ)がおすすめです。
  • 下記に従い、大きめの凝集塊(> 150 µm)を作ります:
    • 2 mLの血清用ピペットを使用します
    • GCDR (Gentle Cell Dissociation Reagent)をご使用の場合: インキュベーション時間を1-2分短縮し、細胞の掻き取りは最小限にしてください。
    • ReLeSR™をご使用の場合: インキュベーション時間を1-2分短縮してください。

  • 細胞融解の際には、細胞播種の前に50 µmの細胞塊を得るため、大きめの凝集塊を軽く粉砕します。
  • 細胞融解後、未分化なコロニーが数個しか見られない場合には、それらのコロニーのみを継代用に回収して新しくコーティングした同じサイズのウェルに播き直してください(ウェルの分割を行わない)。

シングルセルでの凍結・融解時に推奨されること

  • 凍結保存培地は、FreSR™-Sがおすすめです。
  • シングルセル化(細胞解離)には、ACCUTASE™ または GCDR (Gentle Cell Dissociation Reagent)をご使用ください。
  • 1本の凍結保存バイアルに凍結する細胞数は1 x 106 cellsとし、制御された冷却速度の下で細胞を凍結してください。
  • ヒトES細胞・iPS細胞を細胞塊として継代してください。シングルセルで継代を繰り返すと核型異常のリスクが増加します1,2

凍結と融解のコツ

多能性幹細胞の凍結保存と融解について、一般的なヒントをご紹介します。

凍結保存

  • 細胞解離をおこなう前に凍結保存液を冷却しておいてください。
  • 細胞の凍結保存は、継代の際に、6ウェルプレート1ウェル分の細胞を1本の凍結保存バイアルに入れるようにして下さい(培養時の細胞密度により、バイアルあたりの細胞数は変動する可能性があります)。
  • 1本の凍結保存バイアルで凍結する細胞数は1 x 106cellsとして下さい。
  • シングルセルは細胞塊として継代します。シングルセルで継代を繰り返すと核型異常のリスクが増加します1,2

細胞融解

  • 細胞は素早く温めて融解し、開封する前に保存ボトル/バイアルの外側を70%エタノールまたはイソプロパノールで拭き取ります。
  • 小さな氷のペレットが残るのみの状態になったら、2 mLの血清用ピペットを使って細胞を空のコニカルチューブに移します。浸透圧ショックを防止してリカバリーを向上させるため、維持用の培地は細胞へと滴下して添加します。
  • 融解した細胞は mTeSR™1/mTeSR™ Plus または TeSR™-E8™ に培養系を移す前に、凍結保存前と同じ条件で1回継代します。
  • 1本の凍結保存バイアル分の細胞を6ウェルプレートの1-2ウェルに播種します(播種する6ウェルプレートのウェル数は細胞塊またはシングルセルの数によって決定します)。
  • 凍結融解後初めての継代は、想定よりも早い時期に必要になる可能性があります。培養系は非常に高密度になる傾向があり、コロニー同士が融合する可能性があります。一旦継代をして播種密度を調整した後、コロニーの形態は回復します。

ROCKインヒビターの使用方法

ROCKインヒビター(Y-27632)の使用について、シングルセルと細胞塊では違いがあります。

シングルセルの場合

  • 細胞融解後、細胞培養系にROCKインヒビターを添加して24時間インキュベーションします。

細胞塊の場合

  • 細胞塊の融解後、ROCKインヒビターを添加して24時間インキュベートすることも可能かもしれません。しかし、このような操作では播種密度が高くなり、至適タイミングになる前に継代が必要になってしまったり、コロニーの過剰増殖やその他の問題の原因となったりする可能性があるため、STEMCELL Technologies社ではお勧めしておりません。
  • ROCKインヒビターの添加は、ヒトES/iPS細胞塊の接着を向上させますが、必須の行程ではありません。

STEMCELL Technologies社の製品

多能性幹細胞の培養、凍結保存と融解に使用する製品をご紹介します。

製品 商品コード
CryoStor® CS10 ST-07930
mFreSR™ ST-05855
FreSR™-S ST-05859
mTeSR™1 ST-85850
mTeSR™ Plus cGMP ST-100-0276
TeSR™-E8™ ST-05990
DMEM/F-12 with 15 mM HEPES ST-36254
Y-27632 ST-72302
Gentle Cell Dissociation Reagent (GCDR) ST-07174
ReLeSR™ ST-05872
ACCUTASE™ ST-07920
Falcon® Serological Pipettes, 2 mL 38002

参考文献

  1. Draper JS et al. (2004) Recurrent gain of chromosomes 17q and 12 in cultured human embryonic stem cells. Nat Biotechnol 22(1): 53–4.
  2. Buzzard JJ et al. (2004) Karyotype of human ES cells during extended culture. Nat Biotechnol 22(4): 381–2.

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